第16話[休憩]
角を手に入れた私達は今、海に来ていた。
レイナちゃんと緑ちゃんが海で遊ぶ中、スタリエちゃんはビーチでドリンク片手に二人を眺めながら「二人共まだまだ子供ね」とか言って寛いでいた。
「まあそんな事言わずに、ほらっ、スタリエちゃんも行こうよ」
「まあ日菜がそう言うのなら……」
フフフ、スタリエちゃんったら本当は遊びたかったんじゃん。
今日は不幸な事は無し、いっぱい遊ぶぞ。
そして旅の疲れを癒すんだ。
そう私が思っていると、突如突風が吹きヤシの実が私の頭の上に落ちてきた。
その実をキャッチするスタリエちゃん。
そんなスタリエちゃんに私は泣きながら言う。
「帰る……」
「バカンスは中止する」
「ちょっと待って日菜」
「ヤシの実が頭の上に落ちてくる事くらい良くあるわ」
無いよそんなもん。
「それにホラッ、ヤシの実が割れてジュースが飲めちゃう」
「日菜の頭のお陰よ」
私は視線を別の場所に向け、指をさした。
「いらっしゃい、ヤシの実ジュース安いよ」
「いや、その……」
スタリエちゃんが視線を逸らす。
そんな中、レイナちゃんと緑ちゃんがやって来た。
「うわー、ヤシの実ジュースだ」
「飲んでいいんですか?」
私が頷くとレイナちゃんは嬉しそうにヤシの実ジュースを飲み出した。
「ホラッ、緑も飲めよ」
「はい」
嬉しそうな二人を見て、何だか気分が落ちついてきた。
私の不幸もたまには役に立つんだな。
二人の笑顔が見られて何だか良かったよ。
誰かを幸せにできる不幸ならそんなに悪くないかも……。
再び突風が吹き、日菜の頭にヤシの実が五つ落ちてきた。
「……」
第16話 完




