第21話[いざ、カジノへ参る前編]
私達は今、ベルトベア王国に来ている。
勇者が唐突にカジノで一儲けしようと言ってきたからだ。
正直、ギャンブルにあまり良いイメージを持っていないのだが……。
「日菜ちゃん、大丈夫だよ」
「前にお父さんが千円で十万勝ったとか言って、私に色々買ってくれた事があったから、きっと簡単なんだよ」
などと言うので来てみた。
ただ私が付いてきて良かったのだろうか?
不幸体質で全額失うって事は無いだろうか。
不安に思いながらも私はカジノへ足を運んだ。
高そうなシャンデリア。
飲み物を運ぶバニー。
そしてお肉の焼ける匂い。
気を抜いたらヨダレが出そう。
まあ、勇者は別の意味でヨダレを垂らしているが……。
そうこうしている内に案内人の女性が私達の前に現れた。
「飲み物は歩いているバニーからご自由にお取り下さい」
「お食事はコイン一枚で自由に食べて下さって構いません」
そう言うと彼女はコイン売り場へ案内してくれた。
私達は千ベル分の五十枚のコインを手に、スロットコーナーへ移動する。
二十五枚ずつ、三枚掛けをし、あっという間に私のコインが無くなってしまった。
「やったぁ、七だ」
勇者は大喜びし、私にコインを分けてくれるのだが……。
当たらん。
何一つ当たらん。
それでも、隣で勇者が七を当て、コインを順調に増やしてくれる。
彼女の父親が言ったように、千ベルが十万ベルになるのでは?
私は期待を胸に、勇者にご飯を食べてくる事を伝え、コイン一枚を手に持ち、食事スペースへ移動した。
第21話 完
後編へ続く。