第11話[不幸な美少女]
驚いた。
こんな不幸な人間、見た事がない。
立て続けにスリに会い、二人目以降からは財布を持っていない事に舌打ちをされ、道に落ちている動物の芸術品を踏んでは川で靴を洗う。
そして今、魔法で凄まじい炎の柱を出し決め台詞を言ったかと思えば、緑の言う通り中心は空洞なのか、柱が消えたと同時に魔物に襲われ追いかけ回されている。
何なんだこの人は……。
不幸を背負って生きているのか?
いや……、彼女自身がもはや不幸そのものなのか……。
どちらにせよ、彼女を見ていると自分の悩みが小さく……、いや悩みと呼べるものなのかさえ疑問に思えてくる。
私がそんな事を考えていると、彼女がこちらに向かって走って来た。
「おい、こっちに来んぞ」
「よしっ、逃げましょう」
そう言うと緑は私と日菜……、いや日菜さんを抱えて走って逃げた。
魔物から逃げ切った私達は木陰で一息ついていた。
「緑、ありがとな」
「日菜さんを見ていたら悩んでるのが馬鹿らしくなってきたよ」
「んっ?」
「何の話?」
「日菜殿のお陰でレイナ殿が武器を作ってくれる様になりました」
「流石、日菜殿です」
「だから何の話?」
馬鹿正直に事の経緯を説明する緑。
日菜さんはそれに激怒し、私達は正座をさせられ小一時間説教された。
その間、一度だけ魔物に襲われたが日菜さんは「うるさい」と一言いって魔物を杖で殴り倒していた。
そして……。
「ごべんなざいぃ」
「もう、じまぜん」
緑は泣きながら日菜さんに謝っていた。
確かに怒った日菜さんは親父より怖い。
私も少し泣きそうになった。
「いい二人共、これだけは覚えておいて」
「不幸は人を殺すんだよ」
ちょっと何を言っているのか分からなかったけど、日菜さんと時間を共にし私は変われたと思う。
そして、そのきっかけを与えてくれたのは私の隣で大泣きしている緑、お前だ。
「ヒック、これで武器を作ってくれますか?」
当たり前だろ。
私は最高の友人に笑顔を贈る。
「世界で最高の伝説の鞭を作ってやんぜ」
私達を見て日菜さんが笑う。
「よし、これから何か美味しい物を食べに行こう」
「私が奢ってあげるよ」
「ヒック、でも日菜殿お財布は……」
「うっ」
第11話 完




