第8話[心境の変化]
更に数日が経ち、私は緑に心を許す様になっていた。
そして私が何故、武器を作らないのか。
その理由を話そうとした時だった。
「あっ、大丈夫です」
「言わなくても理解しますんで」
いや、全然理解してないじゃん。
何日、的外れな事を言ってんだよ。
ったく、本当に調子が狂う。
「気持ちだけ受け取っておくよ」
「だから聞いてくれ、私はお前に話したいんだ」
そう言うと私はあの日の事について語った。
あの日、アーちゃんが父親に私の作った剣を突き刺した時、私は目を奪われていた。
あの強大で絶対的だった国王を私が作った剣で終わらせた。
そう思い私は興奮し、そして感動していたんだ。
あの国王を……、私の作った武器で……。
アーちゃんが国王から剣を抜き、そして月明かりに照らされた剣を見て、私はこう思った。
(美しい)
この時、私はハッとし手が震えた。
私は武器に魅了されたんじゃないのか?
そう思うと怖くなり、なまくらしか作れなくなった。
「この国の鍛治職人は剣に取り憑かれた人間でも平気で武器を売る」
「武器を渡した時、奴らは他の連中と違い武器を見る目が変わる」
「前にも言ったが武器は命を奪う物だ」
「そいつらがどう使おうが知ったこっちゃねぇ」
「だけどな……」
武器職人が武器に魅了されたらお終いなんだよ。
自分の最高傑作がどれだけすごいのか、試し斬りがしたくなるかも知れない。
幾ら武器は命を奪う物だといっても私自身、人を殺したくは無い。
それに手放したくなくなり商売にもならんだろう。
「だから武器を作るのが怖いんだよ」
「あの時の様に魅了されるのが、私は怖いんだよ」
しばらく沈黙が続き、私は落ち着きを取り戻した。
「緑、お前には実力も才能もある」
「伝説の武器に頼らなくても大丈夫だろ?」
私の言葉を聞いた緑が立ち上がると刀を抜き、私の右腕を斬りつけてきた。
そして私は……。
第8話 完




