第6話[悪い子]
レイナを見つけた緑は彼女に向かって座り、過去の自分について語り始めた。
「私は小さい頃、悪い子でした」
母様は仕事、父様は新作ゲームに夢中で誰も私に構ってくれなかった。
それが寂しくて、私は生まれて初めて悪の道に自ら進んでしまいました。
初めは摘み食いをし、慣れた頃にはおやつを夕食前に食べ、晩御飯が食べられなくなりと、かなりの悪でした。
その度、母様が私を叱るのですが、その都度父様が私を庇ってくれました。
(どんなに悪い事をしても父様が庇ってくれる)
そう思った私は更なる悪事に手を染めてしまう。
そう、私は障子に穴を開けたのです。
母様は激怒しましたが、父様がいつもの様に庇ってくれた。
そんなある日、私はいつもの悪戯のつもりで高価な壺を割ってしまいました。
流石の母様も私に手をあげ、怒鳴りつけていました。
私は泣きながら父様の後ろに避難した。
「落ち着いて」
「なっ?」
「なっ?」
「じゃないわよ」
「あなたが甘やかすから」
父様は母様を抱きしめた。
「大丈夫だよ」
「俺が何とかするから大丈夫」
「辛かったよね」
父様の言葉を聞いて母様が泣いていた。
その姿を見て、私の心が痛む。
母様が自室に戻り、私は父様と二人きりになる。
父様は私を抱き上げてこう言ったのです。
「緑、何であんな事をしたのか俺は聞かない」
「誰にも喋りたく無い事くらいあるもんな」
「父様だって沢山ある」
「だけど、相手の気持ちを考える事も大切だ」
そう言うと父様は私に謝ってくれた。
「緑、ごめんな」
「駄目な父様で」
その言葉を聞いて私は悲しくなりました。
自分が何をしたのか、理解したのです。
「私、母様に謝りたい」
私の言葉を聞いた父様は頷き、私と一緒に母様の部屋へついて来てくれた。
「母様、ごめんなさい」
母様も私を強く抱きしめ、殴ってしまった事を謝ってくれた。
翌日から父様は私と遊ぶようになった。
目の下にクマを作りながら……。
あの日、私は父様から他人の気持ちを考える事の大切さを学んだ。
そして錬金術師殿の言葉。
私はレイナ殿が何故ちゃんと武器を作らないのか考えなければならない。
彼女の事をしっかりと考え、そして友達になるんだ。
「という事で毎日ここへ通います」
「いや、二度と来んなよ」
第6話 完




