第5話[錬金術師]
「すみません皆さん」
「私……」
落ち込む緑に勇者が声をかける。
「ほら元気出して」
「緑ちゃんはあの子に真っ当な鍛治職人になって欲しいからあんな事したんでしょ」
「それに今のままで伝説の鞭を作って貰っても凄い物が出来たか分からないし」
「だからねっ、笑顔笑顔っと」
勇者は緑の頬を弄り笑顔を作る。
「勇者殿、はいありがとうございます」
「とは言ってもこれからどうするのよ?」
スタリエの言葉に一同が悩む。
そんな中、勇者が錬金術師の名前を呟いた。
「彼女ならレイナちゃんが何故ああなったのか分かるかも知れない」
一同は頷き、女王様から錬金術師の居場所を聞き、そこへ向かった。
「レーちゃんが何故ああなったのか知りたいとな」
「お願いします」
「教えてください」
日菜の言葉を聞きながら彼女は眉一つ動かさずにこう答えた。
「帰れ」
「えっ?」
サーベリックは溜め息を吐きながら緑達の方へ向き直る。
「本人が言いたく無い事を私がおいそれと話す訳無かろう」
「第一、アーちゃんには聞いたのか?」
黙る日菜達を見てサーベリックは少し考えた。
「アーちゃんの過去の話しを聞いたのだな」
「それでアーちゃんには聞きにくいと」
黙る日菜達を見て、サーベリックは再び溜め息を吐く。
「私は錬金術師だ」
「何かを考えず、ただ答えだけを求めるのは正直イケすかない」
「口で言わなきゃ分からないのでは無く、言わなくても理解しようとする努力をしろ」
「見当違いの答えを導き出してもいい」
「大切なのはその子の為に気持ちを理解しようと考えた事実、私はそう思うがな」
その言葉を聞いて緑が走って出て行った。
「追わなくていいのか?」
「はい、きっと緑ちゃんは何かに気づいて行動したんだと思いますから」
日菜の目を見て、サーベリックは頭を掻きながら溜め息を吐いた。
第5話 完




