第44話[魔物の住む国前編]
俺は武器を作るのを止めた。
理由は魔物と一緒に暮らす様になって、考え方が変わったからだ。
素材集めに向かった洞窟で他の魔物に襲われていたリトルウルフ。
生まれ付きなのだろうか、この子には右前足が無かった。
俺は魔物達を追っ払い、傷ついたこの子を家族として向かい入れた。
街の連中もリトルウルフを受け入れてくれて、俺は包丁などを作り生計をたてる事にした。
やがて月日が経ち、俺にも嫁さんが出来て子供を授かり幸せな生活が訪れる様になった。
そんなある日の事。
ブランガガル国の連中が訪れ、俺に武器を作る様に命じてきた。
「悪いがもう武器は作らないんだ」
「帰ってくれ」
「そうか」
「おい、連れて来い」
兵士が街の人間を連れて来て、俺の前で街の人の首を斬り落とした。
「お前が武器を作らせて下さいと頭を下げるまで街の連中一人一人の首を斬り落としてやろう」
何て事だ。
魔物を殺すならいざ知れず、同じ人間を殺す為に武器を使うだなんて……。
それでも、俺に選択肢などはない。
俺は兵士達に頭を下げ、口を開いた。
その時だった。
リトルウルフが兵士達を襲う。
だが、敵うこともなく剣で斬られ、そして俺の前で兵士に踏み潰された。
「何だ貴様、魔物でも飼い慣らしている……」
俺は気づいたら包丁を手にし、兵士の首めがけそれを刺していた。
兵士から剣を奪い、兵士達を次々と殺す。
家中から血の匂いが漂う中、俺は街の外へ出た。
第44話 完




