第38話[同情]
色々あったけど、街での生活は本当に楽しかった。
魔王を倒したら、あの街で食堂を開き余生を過ごすのも悪くないかも知れない。
そう話す日菜にスタリエは顔を赤くして聞いていた。
(食堂を開き余生って、それってプロポーズじゃない)
(えへへ、チート能力で料理を選んでて本当に良かったわ)
などと一人照れるスタリエを他所に、ララは一人考えていた。
このまま日菜さん達と街で食堂の手伝いをするか、王国に帰り報酬を手にするか悩み所ですな。
今となっては、日菜さん達との旅は楽しいですし、別れも寂しい。
けれど王国に帰れば遊んで暮らせるし……。
いや、まてよ。
あんないい加減な国王を本当に信じていいのだろうか?
そんな事を考えているララを日菜とスタリエは驚いた表情で見つめていた。
「どうしてララちゃんがいるの?」
「そうよ、あんたが馬車の操縦しなくて誰がするのよ」
二人は慌てて操縦席を見た。
するとそこにはジジルガが座っていた。
「ガハハ、心配ありませんぞ」
「このジジルガ、馬車の操作何てお手の物ですぞ」
そんなジジルガの顔に蹴りを入れ、勇者はジジルガを馬車から蹴落とした。
「馬鹿、あんた馬車の操縦何てできるの?」
心配するスタリエに、勇者は「大丈夫」と答える。
そんな中、顔が青くなっている日菜に気付くスタリエ。
無理もない、勇者が馬車の操縦何て不安だろう。
そう思っていたスタリエだったが、日菜の視線の先を追い、スタリエも日菜同様に顔を青くした。
「勇者様、どうかお待ちを」
「この、ジジルガ」
「絶対に諦めませんぞ」
顔面血だらけで追いかけて来るジジルガに勇者は舌打ちをし、こんな事もあろうかと購入した爆弾を手に取った。
慌てて勇者を止める日菜とスタリエ。
「ちょっと怖いけど、ジジルガさんを馬車に乗せようよ」
「そうよ、日菜の言う通りだわ」
「かなりキモいけど、流石に可哀想よ」
「日菜ちゃん、スタリエちゃん」
「二人は分かってないよ」
「漢にはね、命がけの戦いってものがあるんだよ」
うん、意味が分からない。
そう思いながらも日菜は勇者を止める。
そんな中、勇者から手綱を奪いララが馬達を止め、馬車を止めた。
「どの道このスピードじゃ、馬達が骨折してしまいます」
追いついたジジルガを荷台に乗せ、スタリエは回復魔法を唱え、ララは馬達を休ませるべく丁度いい場所を探す。
「しばらく此処で休みましょう」
こうして日菜達は森で休憩する事になった。
「ハァハァ、ありがとうございます」
「魔法使い様、僧侶様、騎士様」
第38話 完




