第35話[お招き]
お金は入りませんって言うから、どんな報酬を言われるか怖かったけど……。
まさか、弟達に会ってくれだなんて……。
そのくらい、別に報酬にしなくても良かったのに。
お金を渡そうとするが、頑なにそれを拒むリーサを思い出しながら、日菜はリーサの弟達と隠れん坊をしたりして遊んであげていた。
「皆んな元気だね」
勇者は額の汗を拭いながら、日菜に近づき笑顔を向ける。
「それにしてもペンダって、魔王軍幹部らしく無いよね」
「面倒見良いし、直ぐに子供と打ち解ける」
勇者の言葉に頷く日菜。
そんな中、スタリエが昼食が出来た事を知らせにやって来る。
「うめー、こんな美味い物、食った事ねー」
頬にソースをつけながら、リーサの弟は料理をガツガツと食べる。
兄を真似、妹も料理をガツガツと食べる中、リーサは二人に行儀が悪いと叱り、二人の頬をタオルで拭い綺麗にしていく。
そして日が落ち、宿屋へ帰る日菜達をリーサは呼び止めて日菜達にお礼を言った。
「明日も仕事頑張りますので、よろしくお願いします」
日菜達にお辞儀をするリーサに日菜は、もう少ししたらこの街を出て行く事を話した。
「資金も貯まりそうだし、そろそろ旅に出ないとね」
そう言って笑顔を向ける日菜に、リーサは作り笑顔を浮かべ「分かりました」と言って家の中へ戻って行った。
「後少しでお別れ……」
リーサは家の玄関で立ち止まり、瞳に涙を浮かべ、只々玄関の扉を見つめていた。
第35話 完




