第33話[私の気持ち]
街に勇者がやって来た事を知り弟達が私に見たいとおねだりして来る。
「姉ちゃん、勇者様見たいよ〜」
「お姉たん、わたしも見たい〜」
私の可愛い弟と妹。
だけどごめんね。
私、これから仕事なの。
そう言って二人の頭を撫でてあげる。
父がスペースドラゴンに殺されてから、私と母は共に働きに出て、日銭を稼いでいた。
首だけになって我が家に帰ってきた父の遺体。
それを見て、母は号泣していたっけ……。
もう、あんな母の姿は見たくない。
だから私はお金をもっともっと稼いで、家を豊かにしなければならないのだ。
リーサはいい子。
周りに愛想を振り撒き、私は街の人気者。
だけど、その裏では依頼を受け高額な報酬を受け取る悪い子リーサ。
「ありがとう、お陰であのサイテー男に地獄を見せられたわ」
彼女は彼氏の浮気に悩まされ苦しんでいた。
だから私は街中で彼女の彼氏を見つけ、「別の女の子を連れている」と言って叫ぶ。
後は「依頼主の名前を言い、大切な友達なのに」と言って泣けば、街の人達は私の味方をしてくれる。
「あれ、報酬額多いよ?」
「うん、リーサちゃんには救われたから」
「お礼にね」
彼女は笑顔で去って行った。
今日は、家族にご馳走を買って帰ろうかな。
そんな事を考えながら、私は立ち止まった。
何故なら、私の目の前にスペースドラゴンの頭があったからだ。
(嘘、何で……)
(勇者達が倒してくれたっていうの……)
涙で視界が歪む。
父の無念が晴らされた。
溢れ出る涙を拭いながら歩いていたせいか、私は石に躓いて転んでしまう。
そんな私に日菜さんは「大丈夫?」と言って駆け寄ってくれた。
転んで出来た傷をスタリエさんが魔法で治療してくれる。
「はい、気をつけてね」
紙に包まれた食材をバックに入れ渡してくれる日菜さんにお礼を言い、私は家に帰宅する。
「姉ちゃん、お腹空いた」
「お姉たん、お腹空いた」
私は可愛い弟と妹を抱きしめて母にスペースドラゴンが倒された事を伝えた。
「お母さん、今夜はお祝いだね」
丁度、高級食材を買ってある。
「それと、勇者様達に今度会いに行こうか」
「家族みんなで」
第33話 完
 




