第29話[乙女の髪は貴重です」
ジジルガの一件が終わり、改めて勇者に挨拶に来る少女。
お風呂に入っていないのか、不衛生な見た目でニチャァと勇者に笑顔を向け、自分はジュノ・ロイだと自己紹介をする。
そんな彼女に勇者は笑顔で言う。
「何か、男っぽい名前だね」
慌てて日菜が勇者の口を塞ぐが、時既に遅し。
下唇を豪華に噛み、恨めしそうに勇者を睨むジュノ。
あまりの容姿に日菜は小さな悲鳴を上げ、一歩後ろへと後退る。
「いいんですか?」
「呪いますよ?」
「呪い?」
「そんなのある訳無いじゃん」
「キェぇいい」
ジュノが勇者の髪を引きちぎる。
するとどうだろうか、ジュノの頭に勇者のゲンコツが降ってきた。
「髪は女の命なんだよ」
そう言い放つ勇者に日菜は思った。
野宿する度、その命をシャブリ尽くしていた奴の発言とは思えないわと……。
「キシシ、愚か者がぁ」
「これで、お前を呪い殺してやる」
再び勇者のゲンコツが降ってくる。
「人の髪を抜いて置いて、そんな言い方は駄目でしょ」
「はい、謝る」
「ごめんなさい」
涙目で謝るジュノを見て、何だ素直な子なんだと安堵する日菜達。
「これからはちゃんとお風呂にも入るんだよ」
「はい、入ります」
「よし、許す」
そう言って勇者はスタリエにご飯を要求する中、日菜はジュノの頭を撫で、慰めてあげる。
「ジュノちゃん、大丈夫?」
「あんな馬鹿だけど、根は良い奴なんだ」
「だから許してあげて、お願い」
「いや、呪いますけど?」
この時、ジュノの表情を見て、日菜は恐怖で固まっていた。
第29話 完




