第18話[牢屋]
冷たく硬い床。
蝋燭の灯りしか無く薄暗い場所で私は勇者に抱きつかれながら絶望していた。
異世界に来てから不幸体質のレベルが上がったのではと思ってしまうくらい酷過ぎる。
何、私のチート能力は不幸体質(極)って訳?
そんなものチートでも何でも無いわよ。
などと心の中で一人ツッコミをするくらいに私は壊れていた。
「もう、やだよー」
「誰か出してー」
私は鉄格子を掴み叫ぶ。
「まあまあ、日菜ちゃん落ち着いて」
私と同室で満足しているのか、勇者はこんな極悪な環境でも笑顔でいる。
「こんな場所で落ち着いて何ていられないよ」
ネズミの鳴き声を聞く度にビクつきオドオドしてしまう。
実際にネズミが近くに居ても、こんな薄暗い場所じゃ、何処に居るかも分からない。
そんな状態でゆっくり寝てられないし、ご飯も最悪。
小麦を丸めたカスの様なのを湯がいた出汁と一緒に出てきて美味しくない。
極め付けはトイレだ。
乙女に対しバケツでしろと?
ふざけるな。
「こんな生活嫌だ」
「もう、スキル使わないから出してよー」
泣き叫ぶ私の頭に手を置き、勇者が立ち上がる。
勇者は牢屋の鉄格子を掴み、力を入れる。
「ふん」
鉄格子は曲がり、簡単に出られる様になる。
勇者の手招きに従い、私は牢屋を抜け出した。
冤罪何だから大丈夫よね。
そう思いながら、私は勇者の後を追った。
第18話 完




