第27話[恐怖のナナンナ]
モンスター討伐を終えた勇者とペンダが帰還し、宿屋のお風呂でサッパリする中、日菜達は新しく入ったバイトの子を紹介しようとナナンナ達を集めていた。
お風呂から上がり、日菜が口を開いた瞬間、勇者がとんでもない言葉を口にする。
「何で男が居るの?」
何だか勇者の目が怖い。
「シャワー浴びながら、ずっと考えていたんだ」
「何で男を連れ込んでるのかを」
雰囲気は怖いが、言い方に腹が立った日菜とスタリエはすぐさま勇者に反論する。
「何処に男が居るの?」
「ここには女の子だけじゃない」
「そうよ、あんた目がおかしくなった訳?」
すると勇者は「居るよ」と呟き、ナナンナを指差した。
「ちょっと、ナナンナちゃんに変な事言わないでよ」
そう言ってナナンナを庇う日菜に続き、スタリエもナナンナを庇った。
「この子は真面目に働いてくれてるのよ」
「寝言は寝てから言いなさいよ」
更にララ達も加わり勇者が責められていく。
だが、勇者は表情一つ変える事無くナナンナに向けて言葉を放った。
「お前、ジジルガだろ」
「加齢臭が酷すぎるぞ」
女の子に向かってその言葉、日菜達を完全に敵に回した勇者だったが……。
「えっ、嘘」
ナナンナはそう言うと自分の体臭をチェックし始めた。
それを見た日菜達が一瞬でナナンナから距離を置く。
「あっ、嫌ですわ勇者様」
「私は花も恥らう美少女乙女ですわ」
最早誰もナナンナを庇う者は居なかった。
そんな中、お昼の鐘の音が鳴り、ナナンナはトイレに向かおうと勇者の横を通り過ぎて行く。
その時。
「待て」
「何処へ行く?」
「嫌ですわ勇者様、お花を積みに行く所でしてよ」
ニタリと笑う勇者。
ナナンナをトイレに行かせないつもりでいる。
必死に漏れると連呼するナナンナを無視し、勇者は腕に力を入れ、ナナンナを離さないでいた。
流石に可哀想だと思い、日菜が勇者を止めようとした時だった。
信じられない光景を目の当たりにし、日菜は悲鳴を上げてしまう。
ナナンナのアゴが急に割れ、髭が生えてきたのだ。
かなりのギャップに日菜達の胃の中の物が暴れ出す。
更にトドメのオヤジ声。
緑以外は誰もナナンナを直視できなかった。
「何故、私がジジルガだとお気づきに?」
「フッ、そんなの決まってるじゃない」
「私が美少女を心の底から愛してるからよ」
「そんな美少女とオッサンを私が間違える訳無いじゃない」
ペンダもその意見に共感し、勇者同様ナナンナが男だという事を見抜いていた。
そんな二人を見て、日菜は思った。
本当にこの二人、似ているなと……。
第27話 完