第26話[採用、三人目]
もう、誰でもいいや。
ちゃんとした人なら、誰でもいい。
いや、寧ろ修行だと言って面接に来た最初の人達でもいい。
そんな事を考え始める日菜の前に一人の少女が現れた。
「初めまして、アアメルツ・リーサと申します」
深々とお辞儀をし、笑顔が素敵なリーサちゃん。
何故か椅子に座らず、ずっと立っていた。
「えっと、何でずっと立ってるの?」
また変な子じゃ無いのかと疑心暗鬼の日菜にリーサは笑顔で答えた。
「はい、勝手に座るのは失礼かと思いまして、座っても宜しいですか?」
それを聞いた日菜はショックを受ける。
何て自分は愚かなんだろうか。
あれだけ中学生の時、高校受験で面接の練習をしたというのに……、そうだ、普通はどうぞと言われて椅子に座るものだった。
それなのに私は彼女を変人扱いして……。
まあ、今までは普通にドカドカ椅子に座っていたから、それが常識なのかと思っていたんだけど……。
とにかく、この子は採用かな。
「それで、ここで働きたいと思った動機は何でしょう?」
「いっぱいあるんですけど、いいですか?」
そう言うと彼女はスタリエ食堂について語る。
スタリエと日菜の相性やチームワーク、更には料理の味や、従業員全員の可愛さなど、力説し褒めていく。
「こんな素敵な職場で是非働いてみたいなと思いまして、駄目ですか?」
彼女の問いに、日菜とスタリエは即答し「採用」と叫んだ。
それを聞いて彼女は喜びながら心では「フッ、楽勝だわ」と笑っていた。
第26話 完