第22話[スタリエ食堂]
勇者達がクエストをこなしている間に、日菜達は宿屋の一部を借り、食堂を開く事にした。
「みなさん、我がパーティ自慢の料理上手、スタリエ殿が食堂を開きました」
「良かったら来て下さい」
精一杯手書きのチラシを配る緑。
だが、受け取ってくれるのはお爺さんお婆さんのみ。
「可愛いねぇ」
「どれっ、ワシらも一つ寄って行こうかのぉ」
お年寄り受けの良い緑に対し日菜はというと……。
「ハァハァ、お嬢さんパンを二つ見せて貰えないかね?」
何故か変態紳士に大人気であった。
「はいはい、あまりセクハラが過ぎますと……、凍らせて凍死させますよ」
ギラリと睨むララ。
それに怯えた変態紳士は恐怖で逃げ出してしまった。
「日菜さん、ああいう輩は相手してはいけません」
「客として呼び込むと更にエスカレートしてセクハラ発言してきますからね」
「緑さんは、もっと目を潤ませながら……」
ララの指導の元、緑は道行く若い男性にチラシを渡し、目を潤ませながら上目遣いでこう言った。
「来て……、下さい」
チラシで口元を隠し呟く様に言う緑に若い男性は心打たれ「行きます」と叫び、お店へと向かう。
(成る程、萌という奴ですか)
(そう言えば父様も萌について熱く語っていたっけ)
過去を思い出す緑。
「いいか緑」
「萌を極めるなら、先ずは妹だ」
そう、実際に妹が居る人でもアニメやゲーム、漫画などの妹キャラに弱い人も居る。
リアルじゃ絶対に無理。
だけどアニメやゲーム、漫画なら全然オッケー。
そういった現実に妹が居る人達でも引き込まれる。
それが妹キャラの魔力だ。
ひ弱、生意気、ツンデレ、ヤンデレ全てのジャンルに妹キャラが居てもおかしくない人気ぶり。
萌を知るには先ずは妹を知れ。
(などと一晩中語っていたっけ……)
流石父様。
この異世界でも父様の知恵が役立ちそうです。
そう思い、緑は更に道行く男性に声をかけた。
「お兄ちゃん」
「緑、お店に来て欲しいな」
目を潤ませながら上目遣い。
そんな緑に胸をやられ、男はお店へ向かう。
それだけじゃない。
緑は何と女性にまで手を出していた。
「お姉ちゃん」
「お店来てくれる?」
愛くるしい緑の見た目にやられ、道行く女性達もお店へ連れられる。
そして、お店へ誘った人達からの口コミで街中の人達が宿屋へ押し寄せるのだった。
その頃勇者達は……。
「ハァハァ、今何匹狩った?」
息を切らせながら訪ねて来るペンダ。
「まだ五十位、そうだ」
「このまま一気に稼いでキャバクラ行こうよ」
「二千万位稼げば日菜ちゃんも文句は無いでしょう」
勇者の誘いにペンダが乗り、二人は全然懲りて無かった。
第22話 完




