第20話[良心]
朝早くに日菜の怒鳴り声で仲間達が目を覚ました。
寝ぼけ眼を擦りながら起きて来るスタリエが日菜に何事か尋ねる。
「聞いてよスタリエちゃん、この馬鹿二人ったら夜にキャバクラで遊んでたんだよ」
何だそんな事かと思い、スタリエは溜め息を吐く。
「いいじゃ無いキャバクラくらい、別に勇者が好きで嫉妬してる訳じゃないんでしょ?」
もしそうなら、そっちの方が大事件だわ。
そう思いながら、スタリエは続けて話す。
「大体、ウチには八百万の大金が……」
日菜に突き出された請求書にスタリエの顔色がどんどん青くなっていく。
えっ?
五百万?
領収書じゃ無くて請求書?
て事は……、この馬鹿二人、一日で千三百万もキャバクラで使い込んだの?
まだ寝ぼけているのだと思い、スタリエは目を何度も擦るが請求書の額が変わらない。
「そうか、これは夢ね」
「アハハ、一夜にして借金生活何て可笑しいと思った」
そう言って何度も柱に頭を打ちつけるスタリエ。
額から血が噴き出し、痛みが残るだけで全然目覚めない。
やがて、これが現実なのだと受け入れ、スタリエは絶望するのであった。
「スタリエちゃん、あんまり頭を傷つけるのは良くないよ」
「そうだぞ」
「僧侶なんだから命は大切にしろよな」
馬鹿二人の言葉で頭に血が登り、傷口から更に血を噴き出すスタリエ。
正座して反省している勇者の胸倉を掴み、眉間にシワを寄せ睨む。
「あんたら馬鹿のせいでしょうが」
怒りを露わにするスタリエにペンダが事の経緯を日菜達に説明した。
するとどうだろう。
日菜とスタリエはペンダに近寄り、そしてペンダを罵倒し始めた。
「何、騙されてるのよ変態」
怒鳴る日菜。
「あんたの頭は下心でできてる訳?」
叫ぶスタリエ。
緑が二人を宥める中、ペンダは溜め息を吐いた。
「これが勇者の仲間が言う言葉かね」
「あの子はなぁ、両親の為に頑張ってるんだよ」
「そんな純粋な子が私を騙すと思うか?」
スタリエと日菜は声を合わせて「思う」と即答した。
「酷いよ二人共、あの子はそんな子じゃない」
「私には分かるんだよ」
「あの子の優しさが、純粋さが……、勇者だからね」
「いや、万年下心のあんたに何を言われても信じられないわよ」
スタリエの言葉に勇者は「酷い」と言って落ち込んだ。
そんな勇者を慰め様ともせず、日菜はペンダに文句を言い続けた。
「大体、本当に病気ならウチの僧侶を頼ったら良かったじゃない」
「スタリエちゃんは回復のスペシャリストだよ」
日菜に褒められてスタリエは顔を赤くする。
「馬鹿野郎、そんな事したらキャバクラに行った事がバレるだろうが」
全力で叫ぶペンダの頭を日菜は杖で思いっきり叩いた。
「借金を背負わされるよりマシよ」
「第一、こんなに借金してバレないとでも思った訳?」
歪み合う二人を前に、ララは挙手して自分の意見を述べる。
「あの、先程の説明を聞いて思ったんですが、騙されてますよ」
「多分ですけど……」
第20話 完




