第14話[救出]
クソが、クソがクソが。
どうしてブレス攻撃なんだよ。
何で打撃系攻撃じゃないんだよ。
馬鹿にしやがって……。
怒りでペンダが立ち上がる。
もっとだ。
更なる痛みを期待し歩みを進める。
彼女を突き動かすのはドM心ただ一つ。
自分の性癖に忠実で、自分の性欲に奴隷の様に従う。
もし、ここが現世であるならば、間違い無く変質者で捕まるが、ここは異世界。
彼女を縛り付ける物は何も無い。
いや、あったとしても、魔王軍幹部の彼女には全く関係のない話しだ。
「オラ、どうしたスペースドラゴン」
「テメーの攻撃なんて効きやしねぇ」
「まあ、打撃系ならヤバいかも知れないが……」
さりげなく嘘の弱点を流し、打撃攻撃を要求するペンダ。
それを聞いていた日菜は思った。
いや、ドラゴンに話し通じないでしょ。
だが、ペンダの言葉が通じたのか、ドラゴンの様子が変な事に一同が気づく。
鋭い爪で引っ掻く素振りを見せている。
その姿はまるで、プロボクサーが見えない敵と戦うシャドーボクシングの姿そのものだ。
「そうだ」
「それでいい」
「テメーの爪は何の為についていやがる」
「肉を引き裂く為だろうが」
そう、私は興奮すればする程強くなる。
さあ、私をその爪で……。
ペンダの願いは虚しくドラゴンは大きな口を開け、ペンダをパクリと食べてしまった。
「ねぇ、あれって……」
心配そうに見つめる日菜。
そんな日菜に勇者は笑顔を向け、口を開いた。
「大丈夫だよ」
「アニメや漫画で腹の中から出てくるあれだよ」
「ねぇ、ちょっとアレ、本当にヤバいんじゃない?」
スタリエがドラゴンの口元を指差した。
口からはペンダの血らしきものが垂れ、まるで不味いと言いたげな表情をし、ドラゴンはペンダの足を吐き出した。
「あわわ、早く助けないと……」
日菜の言葉を聞いた一同は強く頷き、ドラゴンに向かって走り出す。
ペンダが敵だという事を忘れて……。
第14話 完




