第9話[雪花とペンダ]
いい夢を見た。
村人達と過ごした楽しい夢だ。
このまま覚めて欲しくない。
だが、目覚めてしまう。
ボーっと天井を見つめ、二度寝して夢の続きを見ようとするが眠れない。
やがて完全に目が覚め、現状を理解する。
手足は鎖で繋がれ、寝かされた状態で胴体は固定されている。
鎖を引きちぎろうと暴れてみるが、胴体が固定されているので上手く力が入らない。
なら、固定されている器具を破壊しようとするが、力ではどうにもならなかった。
そんな中、雪花が私に料理を運んできた。
「あっ、目覚めたんだ」
「おはよう」
何て綺麗な子なんだろう。
私はそう思い。
初対面の雪花に目を奪われた。
「はい、ご飯」
「食べさせてあげるね」
口に食べ物が運ばれて来る。
私はハッとして、それらを雪花に向けて吐き出した。
「私を飼い慣らそうってか?」
「残念だけどそれは無理だぜ」
何度口に料理が運ばれて来ようとも、私はそれらを雪花の顔めがけ吐き出した。
飲み物も飲まない。
そう決意し、飲まず食わずの日々が何日も続いた。
そして一か月が過ぎた頃。
私は喉の渇きと空腹で頭がおかしくなっていた。
「殺せ」
「殺してくれ」
後何日で私は死ねる?
後何日で私は村の皆んなと出会える?
早く会いたいよ。
何もする事が無い。
声を出すのも辛い。
そんな状態の私に雪花は口移しで水を飲ませてくれた。
何回も何回も……。
「テメー、何しやがんだ」
「後少しだったのに……」
「後少しで村の皆んなに会えたかもしれないのに……」
私の頬に涙が伝う。
それも、私の涙なんかじゃ無い。
雪花の涙だ。
「私は、あなたが死ぬと悲しい」
そう言って彼女はボタボタと涙を私の顔に涙を落としていく……。
「汚ねぇなぁ」
「どうしてお前が泣くんだよ」
「だってぇ……」
本当に理解出来ないぜ。
散々顔に飯を吐き出されたって言うのによぉ。
私は、あなたが死ぬと悲しいか……。
本当に変な奴だぜ。
そう思っていると、私の顔に雪花の鼻水までもが垂れて来た。
「わっ、ちょっと……」
「本当に汚いから、ちょっとやめて、誰か助けて〜、ギャァー」
第9話 完




