表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/367

第9話[雪花とペンダ]

いい夢を見た。

村人達と過ごした楽しい夢だ。

このまま覚めて欲しくない。

だが、目覚めてしまう。

ボーっと天井を見つめ、二度寝して夢の続きを見ようとするが眠れない。

やがて完全に目が覚め、現状を理解する。

手足は鎖で繋がれ、寝かされた状態で胴体は固定されている。

鎖を引きちぎろうと暴れてみるが、胴体が固定されているので上手く力が入らない。

なら、固定されている器具を破壊しようとするが、力ではどうにもならなかった。

そんな中、雪花が私に料理を運んできた。


「あっ、目覚めたんだ」

「おはよう」


何て綺麗な子なんだろう。

私はそう思い。

初対面の雪花に目を奪われた。


「はい、ご飯」

「食べさせてあげるね」


口に食べ物が運ばれて来る。

私はハッとして、それらを雪花に向けて吐き出した。


「私を飼い慣らそうってか?」

「残念だけどそれは無理だぜ」


何度口に料理が運ばれて来ようとも、私はそれらを雪花の顔めがけ吐き出した。

飲み物も飲まない。

そう決意し、飲まず食わずの日々が何日も続いた。

そして一か月が過ぎた頃。

私は喉の渇きと空腹で頭がおかしくなっていた。


「殺せ」

「殺してくれ」


後何日で私は死ねる?

後何日で私は村の皆んなと出会える?

早く会いたいよ。

何もする事が無い。

声を出すのも辛い。

そんな状態の私に雪花は口移しで水を飲ませてくれた。

何回も何回も……。


「テメー、何しやがんだ」

「後少しだったのに……」

「後少しで村の皆んなに会えたかもしれないのに……」


私の頬に涙が伝う。

それも、私の涙なんかじゃ無い。

雪花の涙だ。


「私は、あなたが死ぬと悲しい」


そう言って彼女はボタボタと涙を私の顔に涙を落としていく……。


「汚ねぇなぁ」

「どうしてお前が泣くんだよ」


「だってぇ……」


本当に理解出来ないぜ。

散々顔に飯を吐き出されたって言うのによぉ。

私は、あなたが死ぬと悲しいか……。

本当に変な奴だぜ。

そう思っていると、私の顔に雪花の鼻水までもが垂れて来た。


「わっ、ちょっと……」

「本当に汚いから、ちょっとやめて、誰か助けて〜、ギャァー」



第9話 完


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ