第16話[頑張る勇者]
快適な朝を迎え、ご機嫌な日菜。
クエストの規定以上にモンスターを狩る勇者に感心しながら、日菜は勇者に声をかけた。
「そろそろ帰ろうか」
勇者は明るく返事をして、二人は酒場へと向かう。
クエストを報告して報酬を貰い、何処でお昼を食べようかと考えていると……。
「あの、このクエストも引き受けます」
積極的にクエストを受ける勇者に日菜は少し驚いた。
いつもなら、クエストを受ける時、面倒臭いと我儘を言うのに、今日は自分から率先してクエストを受ける何て。
成長したんだと思い、日菜は涙ぐんだ。
「日菜ちゃんは先にお昼食べてていいから」
勇者はそう言うが、クエスト内容から一人では大変だろうと思い、日菜も手伝う事にする。
喜ぶ勇者と一緒に目的のモンスターが生息する沼地へと向かった。
相手はこの近辺で上位クラスの魔物、ガオット。
二足歩行で体長はおよそ1メートル、兎の顔をし、雄ライオンの様な立髪がある魔物だ。
私達は群れから離れた一匹を狙い順調に狩って行く。
規定量の数を討伐し、帰ろうと声を掛けるが勇者はそれに従わない。
「ねぇ、今日はもう十分でしょ」
「また明日、頑張ろうよ」
ガオットの返り血を浴びた勇者がゆっくりと日菜の方へ振り向く。
そして……。
「何言ってるの日菜ちゃん」
「もっともっと狩って、レベルを上げないと」
勇者は不気味な笑みを浮かべる。
だが、目は笑っていない。
「一日でも早く開錠スキルを覚えないとねぇ」
日菜は恐怖で持っていた杖を落とした。
第16話 完