第8話[鬼神後編]
村が滅びて数年。
私は村を漁る盗賊達を何人か殺していた。
そのせいか、この村にはすごいお宝があると盗賊達の間で噂が流れ、私は村の宝を守る魔物。
そう呼ばれていた。
殺しても殺しても、盗賊達がやってくる。
やがて、噂を聞きつけた山賊や海賊。
更には王国騎士団までやって来るようになった。
それでも私には敵わず、やがて私は鬼神と呼ばれる様になる。
そんなある日の事だ。
「へっ、まさかな」
私は思わず笑みを浮かべた。
まさかこんな所で魔王と出会えるとはなぁ。
「お宝を貰いに来た」
「へっ、そうかよ」
「そんなに欲しいのなら私を殺してでも奪いなよ」
お宝何て本当は無い。
あれは人間共が勝手に勘違いし、噂を流したに過ぎない。
でも、丁度いい。
魔王なら私を殺してくれるだろう。
仮に私が勝ったとしても、あの世の坊主に自慢できるってもんだ。
私は戦闘態勢をとる。
すると魔王の奴がとんでもない事を言い出しやがった。
「馬鹿たれ、お前を殺したらお宝が手に入らないではないか」
「は?」
「お宝はお前自身なのだから」
何だこいつ。
気持ち悪りぃなぁ。
「お前、言ってて恥ずかしくならないのか?」
鉄仮面越しでも何となく分かる。
コイツ、照れてるな。
バカバカしい。
さっさと倒してしまうか?
私がそんな事を考えていると変なガキが絡んできた。
「おぅおぅおぅ、お父さんに何て事言いやがる。」
黒い小さな鎧を着たクソ餓鬼。
そいつを見て、酷い嫌悪感を私は抱いた。
コイツ、人間じゃねぇか。
まさか、人間を飼っているのか?
私はクソ餓鬼を突き飛ばし魔王に襲いかかる。
人間を飼う何て趣味が悪い。
「死ねぇ」
全力で攻撃したつもりだったのに、魔王には全然ダメージを与えられ無かった。
圧倒的な実力差。
魔王の一撃を喰らい私の意識はそこで途切れてしまう。
「おー、よしよし」
「泣いちゃ駄目でちゅよ」
魔王はペンダを突き飛ばし、黒騎士を抱き上げ必死に慰めていた。
魔王に抱きつき大泣きする黒騎士。
種族は違えど、その姿は父と娘。
まさに親子そのものだった。
第8話 完