第6話[鬼神前編]
辺境の地に私は住んでいた。
魔物である私を受け入れ、仲良くしてくれる村人達。
私はそんな村人達を愛し、そして幸せな日々を送っていた。
「行くぞ、そりゃあ」
木の棒で私に斬りかかる男の子。
勇者を夢見て、私に剣の稽古を頼んできたのだ。
何でも、勇者になって村人達にお腹いっぱいご飯を食べさせたいとか、全く困った悪ガキちゃんだぜ。
「そんな攻撃じゃ誰も倒せないぜ」
「だって、本気で叩いたらペンダが可哀想だから……」
予想外の返答に思わず笑ってしまう。
この私が、こんな子供の攻撃で痛がる訳ないだろう、フフフ、でも何か嬉しいな。
「だがよ、勇者になるんなら私みたいな魔物を倒さないといけないんだぜ」
「そんな甘い事を言っててどうする?」
「ペンダは魔物何かじゃないよ」
「この村の人間さ」
本当に、嬉しい事を言ってくれるぜ。
「あぁ〜、ペンダやっと見つけた」
「今日は私とおままごとをする約束でしょ」
「ペンダ〜、遊ぼう」
「あっ、ペンダみっけ」
子供達に囲まれて皆んなが私を取り合う。
何て幸せなんだ。
取り敢えず私は最初に約束していたおままごとをする事に。
「はい、今日のご飯はお団子だよ」
「おっ、おう」
泥団子を口に頬張り、私は精一杯の笑顔を向ける。
「どう?」
「美味しい?」
「めちゃくちゃ美味い」
正直、美味しい訳無いが、ジュジュリが喜んでくれるのならと、私は全力でおままごとをしていた。
そう、全力で……。
「まだまだ、あるわよ」
どっさり目の前に置かれた泥団子。
私の顔がどんどん青くなっていく。
「コラ、ジュジュリ」
「あなたペンダを殺す気?」
そう言って、ジュジュリの母親が現れ、私を救ってくれた。
「ペンダも、無理しないで頂戴」
「あなたが倒れたら私……」
悲しそうな表情を浮かべてくるジュジュリの母親。
全く、お前も昔は私に泥団子を食べさせていたじゃねーか。
その事を話し、昔の様に頭を撫でてやる。
「なっ、それは……」
「そろそろ狩りに行かないとな」
「新鮮な肉、期待しとけよ」
「もう、子供扱いして」
私はこの村が大好きだ。
争いも無く、のんびり過ごせそうで過ごせない。
そんな村が大好きだった。
第6話 完
第7話に続く。




