第4話[いや、もう帰れよ]
ガタガタと馬車の荷台が揺れながら、そこで寛ぐペンダ。
そんなペンダを見つめながら、日菜がペンダに尋ねた。
「あの、帰らないんですか?」
「ああ、お構いなく」
いや、構うよ。
怒りで血管が浮き出る日菜を勇者が宥める中、ペンダは寝転びながら、欠伸をした。
眠いなら帰れよ。
そう心の中で悪態を吐きながら、日菜は深呼吸をして心を落ち着かせた。
「そろそろ昼食にしようと思うのだけど……」
スタリエはペンダを見つめ、日菜に耳打ちをする。
「食べさせない訳にいかないわよね」
「うん、流石に敵でも何か可哀想だよ」
スタリエは溜め息を吐き、ララに昼休憩なのを伝え、馬車を止めて貰い、昼食の準備をする。
そして……。
「うめぇ、こんなうめぇ飯は初めてだ」
「えへへ、そうでしょう」
「スタリエちゃんの料理は天下逸品なんだよ」
「どんどん食べてね」
勇者のその言葉に唖然とする日菜とスタリエとララ。
どんどん食べてねって、もう既にどんどん食べてるよ。
寧ろ遠慮してねって言いたい所だよ。
つか、五日分の食材がもう底を尽きそうだよ。
「おかわり」
「まだまだ行けるぜ」
「いや、もう帰れよ」
日菜は思わずそう呟いていた。
第4話 完




