第37話[説得]
村を滅ぼす為、日菜達を襲う人魚の女王。
そんな女王に対し、日菜達は必死に女王を説得していた。
だが、彼女の心に日菜達の言葉は響かない。
そんな中、勇者が叫んだ。
「今のあなたの姿、愛しい彼が見たらどう思う?」
「彼はあなたに復讐してほしいと望む人なの?」
「あなたの愛した彼は、優しい人じゃなかったの?」
勇者の叫びに人魚の女王の動きが止まる。
憎しみに満ちた人魚の女王の目に、愛しの彼の姿が映った。
とても悲しそうな表情。
そんな彼を見て、彼女は自分のしてきた過ちに気づく。
女王は嘆き苦しみ、そして憎しみに打ち勝とうと争うが、影の言葉が彼女の脳裏から離れなかった。
「殺せ」
「愛しい彼の命を奪った人間共を殺せ」
「憎いだろ」
「許せないだろ」
「なら殺せ」
「殺すのだ」
苦しむ人魚の女王様。
これ以上、愛する彼を悲しませたくない。
だけど憎しみを抑えきる事が出来ない。
今もあの村の人達を殺したくて仕方が無い。
勇者に救いを求める人魚の女王様。
勇者は剣を強く握り、覚悟を決めた。
そして勇者は人魚の女王様の胸めがけ剣を突き刺していく。
「ありが……と……う……」
女王様からお礼を言われる勇者。
目を瞑り、息絶える彼女の顔に涙を落としながら、勇者は剣を抜く。
「スタリエちゃん、後、よろしく」
そう言うと勇者は何処かへ向かう。
スタリエは頷き、僧侶として、彼女の魂が愛しい彼と共になれるように祈りを捧げるのだった。
第37話 完




