第35話[愛の日記帳]
日菜達は王室の間へ辿り着いていた。
辺りは空気があり水は無い。
「確か話しによると、来客用に水を抜いたとか」
日菜はそう呟きながら辺りを見回した。
人魚達の話しによると、今この場所は影が来た時のままだと言う。
王室の間に水が入れられる事なく、人魚達はそのまま村を襲いに行ったのだろう。
「女王様、いないね」
勇者はそう呟きながら、辺りを探る。
そして、空になった壺を見つけた。
「これって……」
勇者は秘薬の壺を手に持ち、皆んなを集めた。
薬品に詳しい人は居ないだろうか?
勇者がそう呟くと、スタリエ達は一斉に日菜の方へ顔を向けた。
薬と言えば、魔法使いの方が詳しいはず……。
そう思い皆んな日菜の方へ顔を向けたのだが……。
「えっ、私?」
「いやいや私、薬に詳しくないよ」
「どちらかと言えば、数学の方が得意だし、第一、女子高生がそういうのに詳しい訳ないじゃん」
「いやほら、魔法使いのチート能力とかにさ……」
そう言うスタリエに対し日菜が一言。
「あると思う?」
しばらく沈黙が続き、壺は一応持って帰る事にした。
他に何かないかと探る中、緑が玉座に日記帳の様な物を見つけ出した。
そこには、人魚の女王が人間の男性に恋をした事が綴られていた。
彼に容姿や中身を褒められた事、自分と同じ様に長生きできるよう血を与えた事、病弱な母と妹が居て海で一緒に生活できない事などが、そこには色々書かれていた。
「そこで何をしておる」
振り返るとそこには人魚の女王が居た。
「お前達、そうか村を救いに来たのだな」
「愛しのあの人の命を奪ったあの村を……」
「憎い、憎い……」
そう呟きながら、人魚の女王は日菜達に襲いかかってきた。
第35話 完