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第33話[影と愛]
人と人魚の禁断の恋。
よくある話だが、どうやらこの世界も同じらしい。
人と人魚。
寿命が違う二つの種族。
互いに時を共にしようと、人魚は人間に血を与え寿命を同じにした。
だが、彼は人間。
海で生活できない以上、陸で生活するしかない。
人魚と寿命を同じにしたせいか、歳を取るのも遅くなる。
そのせいか村人に嫌われ、弾かれる。
そんな生活に耐えられなくなった彼は自ら海の底へと沈んでいった。
愛する人が住む海へ……。
それが魔王城の書庫で読んだ話だ。
他にも人魚について記した書物もある。
それらを見て、私は思った。
悲痛な愛の物語は人も魔物も大好きなんだろうと。
まあ、私にとってそんな事はどうでもいい。
一番知りたいのは、私が開発した薬の効果だ。
海の中でも使えるのか、中立の立場の人魚がどんな闇を抱えているのか……。
私はそれらを知りたい。
見てみたい。
私は薬を持って海へ向かった。
人魚の闇を暴く為に……。
第33話 完




