第14話[美味いのかな?」
この日、私達は討伐クエストを受け、カメウサギを狩っていた。
見つける度に乱獲し、そして遂にレベルが一つ上がった。
スキルを会得したので早速確認してみると、施錠スキルを獲得していた。
戦闘向きでは無いものの、これは凄く嬉しい。
勇者は職種もあってか、まだスキルを覚えていない。
これから先、レベルが上がる毎にスキルや呪文を覚えて行くのか、そう思うとやる気が出て来る。
そんな時だった。
勇者に声をかけられる。
「ねぇ、日菜ちゃん」
「こいつ、美味いのかな?」
カメウサギを解体しながら勇者が尋ねてくる。
せっかくの防具は血に染まり、カメウサギの臓物からは異臭がして、更にグロく何だか気分が悪くなっていく。
「食べてみよっか?」
吐き気を堪えつつも、私は頷いた。
何故なら、臓物は臭くても、勇者の切り分けたお肉には霜があって凄く美味しそうに見えたからだ。
川で血を洗い流し、肉を並べていく。
見た目だけなら、かなりのレベルのお肉だ。
高級焼肉店に出てきても不思議では無いレベル。
期待しつつ、私達は火を起こした。
「それじゃ、焼いていくね」
焼き石の上に肉を並べる。
肉が焼ける音を楽しみ、焼肉屋を思い出させる匂いに私の心は高鳴った。
タレや塩が無いのは残念だが、肉本来の旨味を味わうって思えば、それも我慢できる……、はず。
「焼けたよ」
「記念に一緒に食べようか」
勇者と一緒にいただきますと言い、肉を口に運ぶ。
肉が舌にあたり、そして…。
「うごぇぇぇ。」
私達は吐き出してしまった。
あまりの不味さに虹のモザイクが止まらない。
獣臭さがびっしりと口内に蔓延し、川で何度も口を濯ぐが匂いが取れず苦しい。
確か昔、お母さんがスーパーでマトンを買ってきて、食べてみたけど…。
それの約三十倍の臭さでは無いだろうか。
それに、後から来る苦味。
とても食えた物じゃない。
この日、何故だか私だけお腹を壊しトイレに篭ってしまう。
後から調べてみたら、どの魔物にも魔力があり、それを上手く取り除かないと美味しく食べれないらしい。
私がお腹を壊したのもそれが原因では無いかとの事。
町医者曰く、勇者は光の加護を受けて大丈夫だったとかなんとか。
私、一応魔法使いなんですけど。
魔力使う立場の人間なんですけど。
理不尽に思いながらも、私はこれから先、魔物を食べる事は絶対にしないとトイレに誓った。
第14話 完




