第24話[お・ね・が・い]
騒いでいたせいか、人魚の歌はいつの間にか止んでいた。
勇者という単語に警戒してしまったのだろうか?
そんな事を考えながらも日菜は皆んなに今日は諦めようと提案する。
すると……。
「諦める何て出来ないよ」
「舟を借りよう」
その言葉にスタリエが反応する。
「いや、今日は諦めた方がいいわね」
「夜の海は危険よ」
それでも勇者は首を横に振る。
「一刻も早く倒さないと、また次の犠牲者が出るかも知れないんだよ」
何でこんな時に限ってやる気なのよ。
スタリエはそう考えながらも、今日は逃げて、もう現れない事を指摘した。
「それでも犠牲者の遺族は早く人魚を殺して欲しいと思っている筈だよ」
言い返す事のできないスタリエは奥の手を使う事にする。
「ねぇ、勇者」
「スタリエ、お舟に乗りたくないなぁ」
「明日じゃ駄目?」
上目遣いでお願いするスタリエに勇者は目がハートになりながら、お願いを承諾する。
「キャッ、ありがとう勇者」
「大チュキ」
勇者に抱きつくスタリエを見て、日菜は思った。
プライドを捨ててまで舟に乗りたく無いのかと……。
村に帰り、村娘に事情を説明し、しばらくして勇者は困った顔をして戻ってくる。
「どうしても今日、退治してほしいって」
それを聞いたスタリエが「はあ?」と言って勇者を睨んだ。
「結局、勇者は女に甘いのよ」と文句を言いながら村娘の前に立ち、スタリエは絶句した。
「どうか、どうか今日中に奴らを根絶やしにして下さい」
眉間にシワを寄せ、憎しみに満ちた表情をし、涙を流す村娘にスタリエは断る事が出来ず、つい「はい」と答えてしまう。
こうして、村からボロい舟を借り、一同は夜の海へと旅立っていった。
第24話 完




