第23話[愛]
夜中、古びた小屋に身を寄せ合う一同。
勇者のイヤラしい息遣いに嫌悪感を抱きつつ、一同は人魚が現れるのを待った。
しばらくして、吐き気を催す程の歌声が聴こえて来る。
「何て歌なの、気持ち悪くて聴いていられない」
「まるでヘドロを飲まされた様な不快感です」
皆んなが耳を塞ぎ苦しむ中、勇者だけが平然とし、立ち上がる。
それを見た日菜達の思考が停止した。
あれ、村人の娘さんの話しによると、男女で歌の聴こえ方が違うとか……。
て事は勇者は……。
日菜と同じ考えなのか、日菜達は急いで小屋から逃げ出した。
「ゆゆゆ勇者殿、最低です」
「女の子同士だから胸やお尻を触らせてあげていたのに、男だった何て……」
「いや、緑ちゃんに何してんのよ」
日菜がツッコミを入れ、冷たい視線で勇者を睨む。
「いや、待って、私女の子だよ」
「胸だってあるじゃん」
そう言って勇者は日菜達に男には無い胸を見せつけた。
だが……。
「いや、実は男が転生したとかかも知れないし……」
「前の勇者の姿を私達は知らないもの」
「そうね、よくよく考えたら変態オヤジっぽいものねコイツ」
日菜とスタリエが怪しむ中、勇者は叫んだ。
「私は女の子だぁ」
「変態オヤジ何かじゃ断じて無い」
「この人魚の歌だって、ちゃんと不快感を感じているよ」
「なら、何であんただけ平気なのよ?」
勇者は大きく息を吸い、叫んだ。
「それは私が変態だからだぁー」
「超絶美少女のアイドルが超音痴だったら皆んなはどう思う?」
「愛してあげたいと思うでしょ?」
それを聞いた一同は声を揃えて答えた。
「「思わない」」
第23話 完