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第21話[美声と音痴]
とある村で若い男女が小屋で愛を育んでいた。
そんな時、海辺から美しい歌声が聴こえてくる。
男は立ち上がり、彼女に向かって言う。
「何て美しい歌なんだ」
「まるで天使が歌っているようだ」
その言葉に彼女が不快感を露にし、彼に文句を言う。
「ハァ?」
「天使何て冗談でしょ」
「仮に天使だとしても、あの歌は世界の終焉を意味しているわよ」
お互いの意見が食い違い、二人は口論となり、やがて彼はその歌声が聴こえる方へ走り去って行った。
女性は耳を塞ぎつつ、必死に彼の後を追う。
そして、歌声が止み、楽になった彼女は走って彼の元へ向かう。
「なっ……」
立ち止まり立ち尽くす彼女に、彼は必死に助けを求めた。
だが、月明かりで照らされて見える海は赤く、愛しの彼の周りには人の形をした何処か不気味な魔物が居て、彼女にはどうする事も出来なかった。
やがて、彼は海の底に沈み、しばらくして彼だった物が浮き上がってきた。
第21話 完




