第13話[宿屋]
暗殺事件の一件でお城から多額のお詫び金を受け取った日菜達は装備を整え、宿に戻っていた。
始まりの地だけあって、高価な装備品は売っては無いものの、周辺のモンスター位はこれで倒せるだろう。
そんな事を考えながら日菜は窓を閉め、ベッドにダイブした。
フカフカのベッドが気持ちいい。
今まで、石畳の床や座って寝ていた為、ベッドの有り難みを改めて再認識する。
三階の角部屋で景色も良く、勇者とは別の部屋をとっている。
くつろげるこの空間で日菜は天井を見つめながら、両親や友人の事を思い出していた。
元気でやっているだろうか。
日菜の瞳に涙が滲む。
そんな時だった。
「日菜ちゃん、私、入っていい?」
ノックと共に勇者が声をかけてきた。
日菜は咄嗟にドアノブに手をかける。
入れたら居座られる。
そう思ったからだ。
「あれっ?開かない」
「壊れてるのかな?」
日菜は懸命にドアノブを抑える。
「まさかとは思うけど、ドア、抑えて無いよね?」
「アハハ、そんな事無いよね」
「だって私達、仲間だもんね」
「それより日菜ちゃん、どうして返事してくれないの?」
怖い。
ドアノブをガチャガチャと回し威圧してくる。
それでも日菜は必死にドアを抑えて耐える。
勇者が帰るまで耐え続けた。
いつの間にか眠ってしまったのだろうか、朝日とそよ風を浴びて、日菜はいつもの朝を迎えていた。
第13話 完




