第16話[可能性]
勇者は語る。
太ればどうなるかを……。
まず第一に、敵から真っ先に狙われるのは間違いないだろう。
素早い緑を狙うより、素早く無さそうな日菜を狙う方が確実だ。
「でも、的を絞れたらやり易いんじゃないかな?」
「相手の手の内が分かるんだもん、こっちの方が有利だよ」
勇者は舌打ちをして、話しを続けた。
第ニに、歩くスピードが遅いから皆んなに置いていかれる。
「日菜ちゃんは想像できる?」
「待ってぇーって言いながら、額に汗かき、色んな所を揺らして走る姿が」
安易に想像できてしまい、日菜の顔が青くなる。
「第三に、爆音のいびき」
「夜中寝ているスライムも、このいびきを聞けば顔を真っ青にして起きるよ」
いや、スライムは基本全身青だろと日菜は心の中でツッコミを入れる。
「第四に、着れる服が減る」
それは嫌だ。
皆んながワイワイお洋服を選んでいる中、私だけ特注何て絶対に嫌。
「最後に、体臭がキツくなるよ」
「ただでさえ、長旅でお風呂に入れない日が続く中、体臭がキツくなれば分かるよね?」
「……」
翌朝、味見役が勇者に変更された。
「どうしてコイツが味見役なの?」
「……」
「日菜、どうして黙るの?」
「何か喋ってよ」
「ねぇ、日菜ってば〜」
第16話 完




