第13話[ネロット]
ヴェヴォールは悩んでいた。
どうすれば、この国が豊かになるのか。
確かにこの国では食材は豊富だ。
だが、美味しい物を食べるにも金はいる。
貧しい者はこの蒸した芋を主食に味気ない食事を食べ生活している。
全ての人間にもっと美味しい物を食べさせてあげたい。
伸びた顎髭を弄りながら、彼は街を歩く。
「待てクソ餓鬼」
オッサンの叫び声、ヴェヴォールはその声の方へと振り向いた。
走って逃げる子供とぶつかり、その子が持っていた蒸し芋が地面へ転がり、通行人に踏まれていく。
潰れた芋を見つめながら、ヴェヴォールは閃いた。
「捕まえたぞ」
店主に捕まった子供は暴れ回り、何とかこの場から逃げようとする。
だが、大人の力には敵わない。
「ふむ、店主よ」
「離してあげてはくれまいか」
「ヴェヴォール様」
富豪のヴェヴォールに逆らう事が出来ず、店主は子供から手を離した。
「ふむ、坊主」
「君のお陰で私の悩みも解決しそうだ」
そう言うとヴェヴォールは子供に金を握らせた。
「店主、あなたも私の我儘に付き合ってくれて感謝する」
店主にも金を握らせ、ヴェヴォールは自宅へ帰って行く。
(よーし、とりあえず芋でも練ろっと)
第13話 完




