第12話[お茶会後編]
約束の時間。
兵士に案内された日菜達は姫様のお部屋へ案内された。
広い部屋に高価な家具。
綺麗なドレスを身に纏い、姫様の顔は引きつっていた。
無理もない。
百万ベルを使い込んだ勇者を連れて来たのだ。
あまりいい気はしないだろう。
日菜は姫様に謝罪して、勇者を連れて来た経緯を説明した。
「いえ、気にしていませんわ」
嘘だと理解しつつも、日菜は姫様の好意に甘え、椅子へ座る。
姫様が侍女に耳打ちをして、しばらく経ち、クッキーと紅茶が運ばれて来る。
それぞれの前にお皿に盛り付けられたクッキーが置かれ、後から紅茶が入ったカップが置かれる。
「どうぞ、お召し上がり下さいませ」
いただきますと言い、日菜達はクッキーを口に運ぶ。
小麦の味しかしなかったが、雑草しか食べていなかった日菜は泣きながらクッキーを食べていた。
姫様と楽しい会話をしながらクッキーを摘み、紅茶を啜る。
優雅なひと時を過ごしていた日菜だったが、いきなり大量の血を口から吐き倒れる。
日菜に駆け寄る勇者。
混乱して状況を整理する姫様。
(どうして魔法使い様が倒れるの)
(勇者のクッキーに毒を入れる様、命令したはずなのに)
混乱している姫様に好機が訪れる。
「まさか、毒?」
勇者は日菜のクッキーを口に運んだ。
(やった、死んだ)
そう思ったのも束の間、勇者はピンピンしていた。
「やっぱり普通のクッキーだ」
(何で死なないの)
ここで、勇者のチート能力、毒無効化が発動していた事を誰も知らない。
一時間後。
日菜は目を覚ました。
目の前には姫様とボロボロの勇者。
話しを聞くと、勇者が毒に効く薬草を採ってきてくれたらしい。
日菜は初めて勇者に感謝しながらも、謝る姫様を快く許した。
「悪いのは姫様を毒殺しようとした暗殺者であって、姫様は悪くありませんから」
「犯人、早く捕まるといいですね」
笑顔で応える日菜。
姫様からも勇者からも騙されている事に全く気づいていなかった。
第12話 完




