第9話[ここはこの世の天国じゃ]
岩盤浴を楽しんだ日菜達は温泉に浸かり、日頃の疲れと汗を洗い流す。
「なんだか水着で温泉だなんて、不思議な感じがするよ」
「そうね、日本で水着で温泉何て入った事ないものね」
「まあ、私の母国では普通なんだけどね」
日菜とスタリエが会話を楽しんでいる中、勇者が緑に抱きつき、緑の体を触り始めた。
「ぐへへ、緑ちゃん異世界に来て大分魅力的になったんじゃないの?」
「本当ですか?」
目を輝かせて喜ぶ緑。
そんな緑に勇者は容赦なくセクハラをする。
「ちょっと勇者、緑ちゃんに変な事しないでよ」
日菜は後ろから勇者の頭めがけ、踵落としを喰らわせると、緑を抱き寄せて勇者から引き離す。
勇者に冷たい視線を送る日菜とスタリエ、そんな中、ララが飲み物を持って現れた。
「皆さん、冷たいお水を……、って何かあったんですか?」
事の経緯を聞かされ、ララは現状を理解した。
「やだなぁ、勇者さんが変態なのは今に始まった事じゃないじゃないですか」
「ララちゃん⁉︎」
「それより、このお水です」
「疲れが取れるだけじゃ無く、お肌にも良いとか、しかも即効性ですよ」
ララからお水を受け取り、それを眺める日菜。
何だかとっても胡散臭い。
でもまあ、即効性って言ってるのだから胡散臭いかどうか飲めば直ぐに分かるか。
そう思い、一気に水を飲み干した。
火照った体に冷たい水が染み渡る。
「すごい、疲れが一瞬で取れたよ」
効果に驚きながらも、何だかお肌もスベスベになった気がする。
まあ、温泉に浸かっているからかもしれないが……。
「日菜さん、次の目的地なんですがトロッケ王国なんてどうですか?」
「世界中の食が集まる国なんですよ」
世界中の食が集まる国……。
エステや岩盤浴、温泉で体を癒し、最高の食事で体の内側も癒す。
うん、最高だ。
何だか旅行を楽しんでいるみたいだ。
私達は宿屋で一泊し、トロッケ王国に向けて馬車を走らせた。
第9話 完




