第8話[愛とマグマと凍える寒さ]
私達は今、マグマの国に居る。
氷は溶け、気温は上昇。
せっかくの防寒着が無駄になってしまったが、私達の心は喜びに満ちていた。
何せ、当初の目的であった温泉やサウナ、岩盤浴を楽しめるのだから。
とはいえ、この一件を王様に報告しとかなくては。
「えっ、今何と?」
「ですから、雪花ちゃんは走って何処かに行きました」
「何で?」
何でって言われても知らないし、魔王軍幹部が居なくなって嬉しくないのだろうか?
ふと、雪花ちゃんの話しを思い出す。
確かこの王様、セクハラ大魔王だったっけ……。
魔王より先にこの大魔王を倒してやろうか。
そんな事を考えていると……。
「ぐふ、やっと……」
「やっと、あの悪魔から解放される」
泣き出す国王を見て心打たれたのか、兵士や大臣までもが泣き始めた。
それを見て、日菜達の考えが改まる。
よくよく考えてみれば、魔王軍幹部の言葉だ。
私達は騙されているのではないか?
そう日菜が考えた時だった。
「戦利品として、雪花殿の靴下を奪って来たのですが……」
「何と、それは誠か」
急にテンションが上がる王様に不信感を抱く日菜達。
そんな中、勇者もテンションを上げ、緑の元へ駆け寄った。
「流石緑ちゃん、それでその靴下は?」
あんた、泥棒猫とか言ってキレてたじゃない。
スタリエは勇者を呆れた眼差しで見つめる中、国王が緑に早く靴下を寄越せと催促する。
「それが、臭くて捨てました」
それを聞いた国王が顔を真っ赤にして怒鳴る。
「この馬鹿タレが、それが良いんじゃろが」
いや、馬鹿タレはあんたでしょ。
スタリエは心の中で呟いた。
「そうだよ」
「捨てるくらいなら私にくれたっていいじゃない」
この馬鹿勇者。
アンタまで緑の嘘に騙されてどうするのよ。
スタリエは溜め息を吐き、そして国王を睨んだ。
「雪花から国王に変な事ばかりされているって聞いたけど、どうやら本当のようね」
「さっきの涙も嬉し泣きでは無く、雪花が居なくなって悲しいから泣いたんでしょ?」
国王は冷や汗を流しながら、適当な事を言って誤魔化す。
だが、日菜達はもう騙されない。
「いや、もう信じられないから」
日菜の言葉にいい返す事ができない国王。
「ぐぬぬ、卑怯だぞ」
「国王を騙す何て、それでも勇者の仲間か」
「うるさい、女の子にスケベな事をして喜ぶ、あんたの方こそ国王な訳?」
スタリエに怒鳴られ、胸をときめかせる国王。
「もっと怒鳴って下さい」
その一言で日菜達はドン引きした。
第8話 完




