第3話[花畑]
私達は今、女王様に会いに花畑へ来ていた。
一面綺麗な花が咲いているこの場所で、女王様は無邪気に走り回っていた。
その姿を見て、勇者が花を一輪摘み、女王様の所へ駆け寄った。
まさかとは思うが……。
「美しいお嬢さん、ちょっとお話しを……」
やっぱりだ。
人妻に何を言っているんだ。
そう呆れていると、勇者が摘み取った花から虫が飛び立ち、女王様の鼻の頭へと止まる。
耳を塞ぐ程の悲鳴。
それと同時に一瞬にして辺りが凍った。
当然、勇者も……。
「勇者〜」
くっ、何て事だ。
勇者が凍る何て、これで旅はお終いだ。
勇者の死を悲しむ私の肩に緑ちゃんの手が置かれる。
「日菜殿、出番ですよ」
「今こそ、火炎柱の役立つ時」
緑ちゃん、何て酷い事を……。
私に殺人犯になれとでも?
火炎柱は究極奥義、言わば必殺技でもある。
そんな魔法を勇者にだなんて……。
そう考えていると……。
「そうね、火炎柱しかないわね」
いや、スタリエさんまで何を言うの?
必ず殺す技と書いて必殺技、つまり勇者は死ぬんだよ。
いくら勇者が変態で嫌いだからと言っても、殺す必要は無いじゃん。
「大丈夫です」
「日菜殿の火炎柱はトイレットペーパーみたいな物」
「日菜殿なら必ずやれます」
あはは、トイレットペーパーみたいな物か、所詮火炎柱は名ばかりで、トイレットペーパーのように、中心は空洞で周りは巻かれた紙の如く派手なだけってか?
わかったわよ。
そこまで言うのなら、やってやろうじゃない。
私の究極奥義で超必殺技。
火炎柱を唱えてやろうじゃない。
(ごめんね勇者、皆んなが貴方を殺せと言うの)
(本当は嫌だけど……)
私は心の中で強く勇者に謝った。
そして……。
「私の全ての魔力を解き放つ」
「最強最悪の究極奥義にして、超必殺技火炎柱」
勇者を中心とし、巨大な炎の柱が現れる。
今まで以上に最高の出来だ。
勇者は間違いなく死んだ。
そう思った私だったが……。
「ふぃー、助かったよ日菜ちゃん」
周りから称賛を得る中、私は地面に両膝をつき泣いた。
第3話 完




