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第11話[お茶会前編]

眩しい朝の日差し、小鳥達の合唱。

そして滑りと同時に聴こえてくるチュパチュパ音。

日菜は自分の耳を赤ちゃんの様にしゃぶる勇者を蹴飛ばし川へ向かった。

これがいつもの朝だ。

入念に耳を洗い、いつもの様に朝食の雑草を摘みに出かける。

日菜の溜め息が止まらない。

前に耳を舐める事を注意した事があったのだが、あの勇者は…。


「えー、耳を舐めてたんじゃなくて、眼鏡を舐めてたんだよ」


などと悪びれる様子も無く言っていた。

とにかく止めてと言っても善処すると言いながら、毎日耳をチュパチュパしてくる。

はあ、早く宿に泊まりたい。

そう思いながら日菜は雑草を摘んでいく。

一通り摘み終えて、雑草を洗い、皿に移す。

勇者はあくびをしながら起きてきて、眠たそうに雑草を口に運んだ。

日菜も雑草を口に運ぶが、これがまた苦くて不味くて、とても食べられた物じゃない。

何とか朝食を食べ終え、いつもの様に勇者を連れて物乞いをしに向かう。

昼を過ぎてお腹が鳴く中、兵士がこちらに向かってやって来た。

それを見た勇者が立ち上がり威嚇する。


「別にお城の前じゃないでしょ」


勇者がそう叫ぶ中、兵士は勇者を無視して、日菜に一通の手紙を手渡した。


「はっ、日菜ちゃんは私の物だよ」

「そんな私の前でラブレターとか、殺すよ」


勇者を無視しながら、兵士は口を開く。


「姫様からです」


そう言うと兵士は去って行った。

日菜は綺麗な便箋の封を開け、中の手紙を読む。


親愛なる魔法使い様

この度はお互いに誤解があったものの失礼な態度をとってしまった事をお詫び致します。

尽きましては、お互いの親睦を深めようと私のお茶会へご招待します。

くれぐれも魔法使い様、お一人でお越し下さいませ。


読み終えると、便箋の中に百ベルがあり、日菜はそれに歓喜した。

早速、宿をとり、服を買い、お釣りは次の宿代の為に貯金する。

そして、約束の時間。

日菜はお風呂に入り新品の洋服を着て準備万端。

その様子を指を咥えながら見ている勇者。


「私も行きたい」


そう言うと勇者は子供の様に、駄々を捏ね始めた。


「やだ、私も行きたい」

「行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい行きたい」


地面に寝そべり暴れ回る勇者。

周囲の視線が痛い。

日菜は大きな溜め息を吐いた。

仕方ない、勇者も連れて行こう。

姫様の謝罪内容を考えながら、日菜は勇者を連れ、お城へ向かった。


第11話 完

第12話に続く。

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