第10話[真実]
笑顔で走り回る子供達。
太陽に照らされ綺麗に輝く噴水。
安っぽい鎧に安っぽい槍を装備した兵士。
激怒する日菜。
「だから、お城の前で物乞いをするのはおやめ下さいって何度も言っているでしょう」
始まりの国に戻ってきた勇者達は、連日お城の前で物乞いをして過ごしていた。
連日何度も兵士に注意され、とうとう日菜が激怒した。
「物乞いってお金何か恵んで貰ってませんよ」
「金持ちが行き来するお城に、誰一人として恵んでくれない」
「私達だって分かってんのよ」
「あんた達が恵んでくれない事くらいね」
兵士は溜め息を吐いた。
「じゃあ、何でこんな所で物乞いをしているんですか」
呆れた表情を浮かべる兵士の顔を見て、日菜の怒りがぐんぐんと上昇して行く。
「物乞いじゃない」
「コレは一種の抗議よ」
「お金を援助してくれないドケチな王様に対してね」
驚く兵士。
それに気づいた勇者が動き、兵士を手刀で気絶させた。
それを見た日菜は親指を立て勇者を褒める。
「あ〜、ムカつく」
「こうなったら、王様に直談判よ」
「うひひ、偉そうな髭を毟り取り、資金援助させてやる」
壊れる日菜を見つめ、勇者の冷や汗が止まらない。
「止めようよ」
「そんな事しちゃったらギロチンだよ」
「ねぇ、だから止めよ」
勇者の制止を振り切り、どんどん進む日菜。
兵士だろうと大臣だろうと押しのけて、王の間へと辿り着く。
「ヤッホー王様、資金援助を受けに来ました」
姫様のゴミを見る様な視線を感じる日菜。
だが日菜は勇者が豪遊していた事を知らない。
無愛想な人だなとしか感じていなかった。
「もう帰ってくれ、我が国にはもう援助する資金が無い」
そう言うと王様は懐からお札を一枚取り出して、日菜に土下座をした。
「ワシの小遣いじゃ。」
「コレで勘弁して下さい。」
怒りが冷めていく日菜。
本当に財政が厳しいのだと勝手に勘違いして罪悪感が押し寄せてくる。
「わーい、千ベルだよ。」
「これ受け取って、さっさと帰っちゃおうよ。」
勇者が千ベルを取ろうとする。
その腕を日菜が掴んだ。
いや、普通に受け取れないでしょ。
これじゃまるで恐喝しているみたいじゃない。
自身の行動を反省する日菜に、姫様は罵声を浴びせる。
「勇者がクズなら、その仲間もクズなのね」
「百万ベルを使い女性を侍らせ豪遊し、無くなったらお城に襲撃をかけ脅し取る」
「あなた達、本当に魔王を倒す気あるんですか?」
それに同調する様に兵士達が叫ぶ。
下手に逆らったせいか、勇者に娘を殺されると思った王様は娘に覆い被さり泣きながら命乞いを始めた。
「日菜ちゃん、騙されたらダメだよ」
「私がそんな事する訳無いじゃん」
「早く帰ろう」
私は気付いたら勇者を片手で締め上げていた。
「日菜ちゃん、くる…し…い。」
その様子を見て、姫様は父である王様を押しのけ、両手を握る。
「魔法使い様……、素敵。」
第10話 完