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三日目のさよなら  作者: 彼処彌真栖
3/3

いちにちめ ふたたび

昨晩投稿するつもりでおりましたが、台風情報追いかけすぎて機を逃してしまいました。

その上、区切りの良いところで…と思っていたのですが。

台風準備のあれこれと、そして台風を無事に乗り切ることが出来るのか不明のため、先に送らせていただきました。

 ぱたぱたぱた…。


 かすかに水の音がする。

 ぼうっと目を開けた。


「………」


 ぼー…。(状況把握中)


「よし、わかった」


 大きくうなづくと、よっこらしょと立ち上がる。

 ふらふら窓に近づいて、開けっ放しだった部分の網戸をガラス戸に替えてみる。

 しとしとと、今日は雨だった。さっきまで朝日がきらめいていたはずなのに。これからまた晴れるのだろうか。台風自体はまだ遠くのはずだから、たまたまそんな日なんだろうけれど。

 ガラケーで時間を確認すると、10時ちょっと過ぎ。

…………どれぐらい転がっていたのか。

 さっきが何時だったかわからないので、たぶんそれは永遠の謎である。

 あんなに何度も気を失うとか、血管に異常があるんじゃなかろうか。

 鏡面をちらりと見たが、とりあえず後片付けを優先した。



 かちゃかちゃぷくぷく泡を立てて食器を洗い、拭いて、所定の場所に戻す。

 一杯やってから洗うつもりだったのに昨日から気絶しまくりだったので、正直、一昨日の分である。反省。

 すっきりした水回りを確認し、ふうと息をつく。それから、ひさしぶりに納戸を開けて、探し物を………ごそごそ。物持ちがいいご家庭のわが家なので、きっと捨てずにどこかに残っているはず…ごそごそ。


「あった」

 探し物、それは。


────これは。


「ぱらりらりー♪ 【俺の闘魂棒(略称)】-っ」

 正式名称は、『僕の!私の!そして俺の!!未来をきざむ闘魂棒』(当時みんなでつけた名前)。


────誰もが一度はしでかす(かも知れない)、修学旅行の若き過ちの産物である。きりり。



 謎の文字が描かれた木刀のようなものを抱えて、自室にUターン。

 さあて、覚悟を決めましょうか。


 いや、別に使わないので。そんな、美少女たぶんに木刀とか。そんな。

 でも大昔のホラーをわりとたしなんでいる身としては、もしあの鏡がぐぐうと盛り上がって中から出てこようとする何かがいたら、叩く。美少女でも、たぶん叩く。ストレイ●オ容赦せん。





「……………困った」

 あれから数時間。

 姿見の前で、困惑していた。

 いろいろ試してはみた。それはもういろいろと。

 宴会のふりから、祈って、踊ったりもした。でも、駄目だった。

 試しすぎたせいで数時間もかかってしまったわけだが、肝心の鏡はうんともすんとも言わず。ただあの時見た漆黒の空間が背後に広がる────わけもなく、しょんぼりがっくり肩を落とした自分の姿が写るのみ。

…………何が足りないんだろうか。

 ここはやはりチューハイ(大)が必要だったのか(在庫が枯渇して試せず)、それともおつまみか(以下同)。

 誇示するように鏡面から見える位置に立てかけた【俺の闘魂棒(仮名)】が悪いのか。

「────あ」

 共通項がないから気がつかなかった……というよりも、洗濯籠に突っ込んだので存在を忘れていた。刺繍の殺人布(濡れ衣)。でも、まさかなあ。

 カゴに手を突っ込んで、さっき着替えたTシャツの下から引っこ抜く。あ、Tシャツも一応試してみるべきなのか。こちらも回収。


「これを…」

 額に汗かいているつもりで、ふきふき。

 しーん。

「デスヨネー」

 あとは…なんだろう。

「拭いてみるか…」

 手形のあたりを、軽く拭く真似をする。反応なし。はあ。

………夢だった。

 で終わらせるには、ちょっと後味が悪いので。もう少しがんばろう。彼女の。


「幽霊少女(推定)の、存在理由が、知りたいんだ」


 ふうう…。長い息を吐いて、そっと目を閉じ、姿見におでこをつける。冷たくて気持ちがいい。そうか。あの時も、たしかこうやって下を見たら彼女が────



 彼女が、いたよ。


 何がヒットしたんだ。布か。ため息か。自分のおでこが異界を呼ぶのか。

 でも様子が変なんだけども。

 鏡の向こう。

 下を向いた自分の膝上あたりに金色の影が見える。彼女の長い髪だった。昨晩ぼろぼろだと評してしまった衣装………もうこれ絶対ドレスでいいよね、現代日本の日常ではほぼお目にかかれないやつ。某所はのぞきます………が礼儀正しく左右にこんもり盛り上がっている。

 なので、一瞬、全体のシルエットを見て何のいきものだろうこれとか思ってしまった。失礼。

 これは、あれか。座り込んで、背中を向けているっぽい。むしろ鏡に寄りかかっているのだろうか………あ、寝てるのか。

 本当なら巻き髪になっているのだろう。名残のようなウェーブが、肩から零れ落ちている。本来ならば、ぴかぴかに輝いて見えるのだろうけど、今は正直、無残としか言いようがない。

 か細いといえるその背中を見る。

 実はゾンビだから細いんです、とかじゃないよね。信じてる。いや別にゾンビでもかまわないけれども。


 彼女が、わからない。

キミは誰なんだろう。

 どうして、ここにいて(それはむしろあちらの言い分かも知れないが)

どうしてそんな格好でいて

 そんな姿になってまで


 何を望むのか。


 

 表情の見えない、細すぎるその背中。

 かくりと斜めにうなだれて、かろうじて後頭部が一部分だけガラスにくっついている。

 ぼさぼさの、小さなあたま。不意に何かがこみあげてきて。

 そっと。

 触れられないガラス越しに、後ろあたまに手をあてる。


 よく、がんばりました。


 なでなで。

 ずぶっ。


「あっ」




…………。







 いま、

 何も起こらなかった。

 いいね?

 









前書きのような理由から、この3話目のしっぽあたりに付けたしまたは修正という形で、台風後、また手直しさせていただきます。

たぶん、停電が発生するのではないかと…ごふり。

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