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xxA.再構築Ⅰ「懐かしき旅の始まりと穏やかな日々」

001〜014までの物語をまとめています。

 元いた世界の記憶が断片的で曖昧な、かつて大人だった少年『ひだり』は、目覚めた時に側にあった魔法の杖を元の持ち主に返そうと二ヶ月の間放浪、その旅の末、とある街で途方に暮れていた。チェスのポーンに形が似ていることから“ポーン”と名付けた琥珀色の大杖は全く持ち主が見つからず、無一文の現状からも脱却できていなかったからだ。


 そんな時、ひだりは無銭飲食などの罪で警備隊に連行されてしまう。連れて行かれた留置場で、ひだりは二人の少女、一人前の『月曜の賢者』を目指すロロットと彼女の親友でケモミミ族のジュジュに出会う。


 町の警備隊では手に余るということもあり、彼女たちに身柄を引き渡されたひだりは、彼女たちの「賢者を訪ね歩く旅」に強制的に同行させられることになる。ロロット曰く、一人前の賢者になるためには三人の賢者からサインをもらう必要があるのだという。その三つのサインを手に入れるための旅ということだった。


 ロロットの父が治める国、シェルバ公国から隣のトリコロール連合国へ向かうために訪れた駅で、一行は似顔絵師の青年、成平(なりひら)に出会う。旅の記念にと少女二人は似顔絵を描いてもらうことにしたが、軽薄そうなこの青年にひだりはあまり良い印象を持たなかった。


 夜行列車にて最初の目的地であるガルドレッド領サントレアへ向かっていたところ、列車が急停止した衝撃でひだりは深夜に目を覚ます。廊下で会った車掌との会話から、魔獣が線路を横切ったことが原因と判明。魔獣や魔物の巣食う危険地帯“禁足地”がすぐ隣にあるため、それほど珍しいことではないと車掌は言うが、好奇心に駆られたひだりは車掌に許可をもらって少し外の様子を見に行くことに。


 残念ながら魔獣を見ることは叶わなかったが、ひだりは禁足地の森の縁で一枚の紙切れを拾い上げる。それは何らかの書類の断片のようであったが、そこに書かれた文字にひだりは背筋が凍った。


 ——“人体実験”、“米国に送るスパイ”、“使い物にならない実験体”、“ゴミ人間の処分”、“極秘裏に遂行”、“政府からの要請”、“日本国内の情報規制”——


 ここは紛れもなく異世界であるにも関わらず、そんな不気味な言葉が並んでいたからだった。


 そんなことがあって、目的地のサントレアに到着した頃には、ひだりはすっかり寝不足気味であった。ここはロロットがどうしても来たいと言っていた街だが、その理由は、絶景と評判のサンタ岬を訪れたいと思っていたからだった。賢者を目指す旅が始まったばかりの彼女は、まだまだ観光旅気分が抜けていないのだ。


 昼食を取り終え、そろそろサンタ岬を目指そうというところで、一行は再び絵描きの青年成平と出会う。どうやら目的地が同じだったようで、こちらの予定を盗み聞いた彼は自分も岬へ同行していいかと尋ねてくる。ロロットとジュジュが彼を歓迎したため、ひだりも渋々だが同行を認める。こうして、新たに成平を加えた一行は絶景が拝めるというサンタ岬へと向かう。


 ところが目的地に向かう途中、ジュジュが迷子を保護したことで、まずはその子の両親を探すことに。幼子の話によれば、彼の両親は大きな鳥に荷物を取られ、道を外れた林の中に消えていってしまったのだという。ひだりたちは幼子の指し示す方向へと林の中を進んでいき、彼の両親を探し始める。


 陽が少し傾いた頃、一行はついに怪我を負って動けなくなっていた幼子の両親を発見する。大好きな両親を見て一目散に駆け出す幼子。しかしその幼子を狙い、上空からワシのような大型の魔獣が急降下してくる。呆然と立ち尽くす幼子を助けるため、いち早く動いたひだりは無我夢中で杖を握り、魔法の体を成していない魔法で未熟な障壁を展開。魔獣の衝突で体が吹っ飛ぶも、ひだりはなんとか幼子の命を助けることに成功する。


 ひだりの行動に勇気をもらったロロットは、賢者専用の魔道具『星の杖』の一つであり、“精神と感覚を支配する魔法”を得意とする、二ツ星の黒杖(こくじょう)ルーナでもって無事、魔獣を撃破する。


 事態が収まった後、多少の怪我を負ったひだりはロロットに治癒魔法をかけてもらうが、ひだりの怪我は一向に回復しなかった。不思議に思った彼女がひだりを調べてみると、魔法による影響の受けにくさを示す魔効抵抗力(まこうていこうりょく)が桁外れて高いことが判明。それはもう、人類最強と謳われる賢者に匹敵するほどの高さだった。


 その後ひだりは幼子の家族とともにサンタ岬を訪れ、夕日に染まる絶景を拝んだ。そこからサントレア市街に戻ろうという道中、成平が突然、ひだりに自身の旅の目的を語り出す。彼曰くそれは、ひだりに興味があって今後も旅に同行したいと思っているがゆえの、自分なりの誠意らしかった。

 成平は東方諸国出身であり、あらゆる書物の収集・保管を行なっている“世界図書館”という機関からの命を受け、四つの禁書を探しているのだと語った。


 ——読破した者に何者にも屈しない究極の武をもたらすとされる、『覇者の書』。

 ——死者蘇生と不老不死に関する記述があるとされる、『黄草仁経(こうそうじんけい)』。

 ——幾万もの人間の魂を一瞬にして奪い取り封じ込める死神、『ソウルイーター』。

 ——この世の真理が説かれ、創世の奥義が記されているという、『ヘルメスの()』。


 悪用されれば冗談抜きで人類が滅び、世界が滅亡しかねないという禁書。それを成平は探し求めているのだと。そこからどうして自分に興味を持つに至ったのかを聞く中で、ひだりは自分が異世界から来た人間であることを成平が知っていることに気づく。


 サントレアに戻って夕食を食べた後、成平はそのあたりのことを色々とひだりに教えた。異世界から来た人間は“来訪者”と呼ばれること。異世界や来訪者については一般人も知っていることだけれど、百二十年くらい前にゴタゴタがあった関係であまり良くは思われていないこと。来訪者には独特の雰囲気があるということ。成平にはカエル姿の来訪者の知人がいること。

 いつかそのカエルの来訪者に会わせてくれるという約束でこの会話は終わり、二人はロロットたちとともに宿へと戻っていく。


 帰り道の途中、ひだりはサンタ岬でのロロットの活躍ぶりから、彼女に魔法を教えてくれるよう懇願する。一応要注意人物として旅に同行させているため、危険な魔法は教えられないとしながらも、ロロットはひだりの願いを聞き入れることにし、魔法を教えると約束した。


 そして宿に到着したところで、ロロットが思わぬ人物に声をかけられる。彼女が目にしたのは、フリルのたくさん付いた、スカート丈の短いメイド服を着こなす黒髪のツインテールの少女。彼女はなんと、『水曜の賢者』の侍女なのであった。

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