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 ……「薔薇の塔」とは、王国の国教である「白聖教」の総本山で、実のところは女性の強制労働場所…「薔薇の塔」とは奴隷収容施設と同じだった。塔の中では様々な強制労働を強いられ、中での環境は最悪で死者も後をたたないとの噂だった…。

 ジェネラルの一言は、およそ人質と同じ状態だった家族を、もはや必要ないと見なされたという事だった。今までおとなしくしていたジェネラルは、どんな思いをしているのか…俺には想像もつかなかった。


 俺はジェネラルに全てを話そうと決めた。


 「…ジェネラル、折いって話がある。あんたの力が必要だ。…俺はこの収容所を解放する!近いうちに」

 「…本気で言っているのか…?」

 「もちろん、こんな事冗談で言えない。その為に今は下準備の最中だ」


 とんでもない話を突然始めた俺に、キコやレイも驚いている様だった。俺は構わず話を続ける。


 「俺はここを解放して、まず自分の街を作る。そこにここにいる全員を住まわせ、生活の基盤を作る。そして軍隊を作り、王国から守れる体制を築く!」

 「…そんなに単純じゃない、幼稚な考えだ」

 「ああ、そうかも知れない…。だけど、3賢人が味方をしてくれるとしたら?それだけでなく、あんたも力を貸してくれるならそこそこ大丈夫じゃないか?…まあ、まだ2人の賢人にコンタクトを取っている段階だけどな…」 

 「…何、ビスコンティ卿とフェイト卿とはコンタクトしたって言うのか?…まあシャドーキング卿は…良く分からんがな。…なるほど、本気なんだな?」

 「ああ、そのつもりだ」

 「…わかった、まだ甘い部分はあるが今はここを出る事が第一だ。俺も手を貸そう」

 「わかってもらえて良かったぜ、ジェネラル!」

 「それで、ひとつ報告しておく。シャドーキング卿はおそらく近くにいる。俺は感じるんだ、戦場の勘とでも言うのか…以前シャドーキング卿に感じたものをこの場所でも感じた。多分ここにいるんじゃないか」

 「そうか、わかったぜ。…おっと、そろそろいつもの掃除に行かないとまずい、また終わったら話すぜ」


 そこで会話を終えて、俺はいつもどおりトイレの掃除に向かう。まずは1番遠くにある場所からだ。


 「ここは、いつも酷く汚されたんだよな…ふん、ふん、ふん♪」


 …トオルが掃除をしている場所に、近づく者がいた。トイレに近づくにつれ、トオルの存在に気づく。トオルの鼻歌が耳についた。


 「…この曲…まさか…」


 その者はトイレに入って行くと、トオルの姿を見つけた。楽しそうにトイレを磨いている。思わず声をかけてしまった。


 「…その曲はもしかして、イギリスのロックバンドの曲かい?」

 「うわっ!」

 

 …突然声をかけられて俺は驚いて叫んでしまった。小柄な人物だ。まだ子供なのか、髪は金髪で前髪が目を隠すほど長い。細身で鼻筋はとおっている。美形だった。 

 うん?今何かイギリスって言ったか?…まさか⁉︎


 「…あんた、転生者なのか?」

 「ああ、あなたも転生したのかい?」


 俺は掃除の手を止め、今話しかけてきた者をまじまじと見つめる。

 いったいどんな奴なんだろう?子供のようだが子供には感じられない。


 「俺はトオル、トオル・タイラだ。転生者に会うのは初めてだ、よろしく」

 「ああ、そうか君がトオル・タイラか?僕はヴィヴィアン・.シャドーキング、君の事は良く知っている。いや、知っていたと言うべきか…転生者とは知らなかったけど」

 「えっ、えぇ?…シャドーキングって、まさか、スカーレット・ビショップのシャドーキング卿⁉︎」

 「あ、そんな呼ばれ方もしてたかな…まあ、僕は余り人前に出ないからね、面倒くさいし…」

 「まさか、こんなに若い方だとは思いませんでした。あ、俺はあなたを探していました。フェイト卿にあなたに会えと伝えられて….」

 「へえ、あの怠け者が僕に会えって?ふぅーん、それで、その前に用を足したいのだけど…」

 「あ、ああ、どうぞ….」


 …しばらく俺はその場で立ちすくむ。まさかこんな形でシャドーキング卿に会うとは思わなかった。しかも転生者⁉︎

 やがて扉を開けてシャドーキング卿は姿を見せる。汲み置きの水で手を洗いながら話しかけてくる。


 「それで、君は僕にどんな話があるんだい?」

 「ああ、俺に手を貸して欲しいんだ」

 「うん、構わないよ」

 「えっ、ずいぶん簡単に…」

 「君はここを解放するのだろう?それなら僕も手を貸そう」


 …俺は何も言って無いはずなんだが、何故わかった?


 「何故それを?」

 「だいたいの検討はついていたさ、そろそろ誰かがそうするだろうってね。あ、僕はこの世界で力を貰ったんだけど、先を見渡せる力、まあ、たまにその力を貸してあげていたくらいしか仕事しなかったのだけど」

 「未来予知って事?確かフェイト卿もそんな力があるって言ってだけど…」

 「ああ、それは方便だね。僕が彼に伝えていたのだから…全くあの怠け者め…」

 「…良く、わからないけど味方してくれるという事なのか?」

 「うん、そのつもりだ。多分、大変な事が起こるけど上手く行くはずだよ」

 「…そう、なのか?」

 「まずは、お手並拝見しよう、それでは後ほどお会いしよう。あ、それから明日辺りにフェイトに会うといいよ、また君が会った場所にいる筈さ」


 …シャドーキング卿はトイレを離れて行く。俺はしばらくボーっとしてしまったが、手を貸してくれる約束をしてくれたのは事実だろう。

 もしかして、トイレで会う事も知っていたのかも知れない…。

 とにかく明日フェイト卿に会いに行く事が必要だな…。

 そんな事を考えながら俺はまたトイレの掃除を始める。タブレットの表示が1ポイント増加していた…。



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