ビスコンティとの再会
翌朝、俺はある人物を探す。以前ビスコンティ卿に取り次いでくれた元兵士と思しき人物だ。
俺は作業を続けながら、その人物を探す。遠くに姿を見つけた。
どうしたことか、彼の方から近づいてくるようだ…。
俺に近づくと一言声をかけた。
「何か用か?意識がこっちに向いていた」
すげぇ、あんな遠くからわかるのか…?
俺は男に話しかける。
「…閣下に会いたい」
男は目も合わせずに答える。
「前の場所で今夜…」
俺はわかったと答え、その場を離れ作業を続ける。しかし、この男は何者だろう…?
1日の作業を終え、俺は以前ビスコンティ卿に会った場所に向かう。ビスコンティ卿は既に待っていた。
「トオル様、またお会いしましたな。私に話が?」
「はい、実はマーシフル・フェイト卿に会いました」
「ほほう、まあ、いずれ会うとは思っておりましたが、思ったより早かったようですな。それで彼は何を?」
「はい、2人の賢者を探せと…」
「ふむ、なるほど…トオル様、以前の王政において4賢人体制と呼ばれていたのは知っておりましたか?」
「あ、ああ‥確かロード・オブ・ゴールドと呼ばれた前王、キング・ダイヤモンドのフェイト卿、そしてグレイト・エメラルドと呼ばれたビスコンティ閣下、そして確か…スカーレット・ビショップと呼ばれたヴィヴィアン・シャドーキング卿…」
「ふむ、その通りです。そして貴方が会っていないのは?」
「シャドーキング卿…」
「そう考えられますな、しかし残念ながら、私にもシャドーキングの居場所はわかりません」
「近くにはいない…という事でしょうか?」
「実は、私もシャドーキングの事は良く知らないのです。姿を見た事も数回しか無く使いの者が報告して来るだけでしたので…」
「えぇっ?ビスコンティ卿も良く知らないのですか?…謎の人物という事なのですね…」
「うむ、しかし、意外にすぐ会えるかもしれませんな…おそらくシャドーキングも色々動向は見ている筈ですからな」
「わかりました、それでビスコンティ卿、俺はそろそろ行動を起こすつもりでいます」
初老の元宰相の目が厳しく光る。
「それは急な事ですね、私はもう少しかかると思っておりました。何か理由でも?」
「ええ、力強い仲間を見つけましたので。閣下にも協力頂ければ助かるのですが…」
「ふむ、私はもはや隠居の身…助けになるかどうかわかりませんが話によっては考えましょう」
「はい、具体的な話はまた今度お話しします。それにしても、あの取り次いでくれている方は何者ですか?軍人にしては少し感じが違うように感じますが、只者ではありませんね?」
「ほっほっほっ、あの者はジェイと申します。ずっと私の耳として使えてくれた者です。かなり厳しい状況も乗り越えて来ました」
「なるほど、納得しました。俺もまた詳しい事が決まり次第報告します。その時は閣下の協力を期待しております」
「そうですね、その時をお待ちしております」
俺とビスコンティ卿はその場を離れる。俺は自分の部屋に戻ると、何か異常な雰囲気のジェネラルが目についた。怒りと絶望をその目に宿している様に感じる。
「いったい何があったんだ、ジェネラル?」
「………」
ジェネラルは何も答えない…。余程の事があったのだろう。
突然、頭の中で声が響く。
「…トオル、ジェームズは何か悲しい報告を受けたみたいだ。看守から何か言われ、ずっとあんな感じなんだ」
リンコンだった。突然頭に響く声も段々と慣れてきている。
「…そうか、なんだろう…もしかして家族に何かあったのか…?」
俺はジェネラルに話しかける。
「なあ、ジェネラル、もしかして家族に何かあったのか?」
ジェネラルはギロリと俺を睨む。今までに見せた事のない表情だった。悲しみと怒りと絶望が入り混ざり、今にも爆発しそうな顔をしている。ポツリとジェネラルが答える。
「…家族が薔薇の塔に入れられた…」
「なんだって⁉︎」
俺はその意味を直ぐに理解した。