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ギドラ




 俺達は途中軽く休憩をはさみながら、次の街へ向かい歩き続けていた。もう辺りは闇に覆われていたが、こんな時の為に、俺はライトの魔法を覚えておいた。

 皆の少し上空に明るい光の球が浮遊しながら着いてきている。それなりに見えるように明かりを照らしている。

 

 「…しかしトオル、お前いつの間にこんな魔法を覚えたんだ?」


 ジェネラルだった。俺は答える。


 「ああ、こんな事もあろうかと用意していたのさ」

 「まったく、食えない奴だなお前は…」

 「ははは…」


 ヴィヴィアン卿とビスコンティ卿は先に移動してもらっている。先頭にジェネラル、次にジェイ、リンコンそして俺の順に歩を進めて行く。ギドラは時折上空をくるくる周り、何かを確かめた後にまた俺の肩に戻ってくる。どうやら夜目が効くようだった。ギドラがいるからなのか、危険な獣の襲撃などはなく、俺達は順調に歩き続けていた。少し先に、明かりが移動していくのが見えている。先に進んでいる者達にも、今のところ異常は見当たらなかった。

 もう何時間歩いただろうか?かなり先まで進んでいるはずだった。

 

 ふと、頭の中に声が響く…。


 「…うんうん、この方向で間違い無いようだ。後5、6時間この調子で進めば辿り着ける…」


 …そんな声が聞こえてきた。俺はリンコンに尋ねる。


 「リンコン、何か言ったか?」

 「…いや、何も言っていないが…」

 「……?」


 いったい何事だろう?誰かの声が確かに聞こえるのだが、姿は見えない。

 …また聞こえる。


 「…この先には特に危険なところは無いな。うん、しかし主人(マスター)も便利な魔法を持っているな…普通の者だったら灯りを持って移動しなくてはならないからな…」

 「…もしかして、ギドラ…?…」

 「…主人(マスター)、私の声が聞こえているのですか?…」

 「…ああ、お前時々上空から様子を見てくれていたのか?だとしたら感謝する。ありがとう。…」

 「…いえ私はしもべとして当然の事をしていたまでです…」

 「…そうか…ギドラは他にどんな事ができるんだい?…」

 「…はい、身体を大きくしたり、後は口から光線を吐き出す事もできます。…」

 「…そうか、すごいな。それでその三つの頭はそれぞれに意思があるのかい?…」

 「…いえ、頭は全て一つの意思です。別々に動かせますし、右や左の頭から同じように意思を伝えられます。…」

 「…おお!それは混乱しなくて済むな。…そうか、じゃあこちらから声をかけたら答えてくれるんだな。これからもたのむせ、ギドラ!….」

 「.…はい、主人(マスター)。そして、この名前頂き感謝いたします。….」

 「…ははは、気に入ってもらえて良かったよ…」


 ギドラと会話ができるという事は、非常にありがたい。何かあった時に意思の疎通ができる、これは頼もしい限りだ。


 「….それと、もう一ついいか?俺や仲間を乗せて飛ぶ事も可能かい?…」

 「…問題ありません、どうぞご命じ下さい主人(マスター)。….」

 「…ああ、その時は頼むぜ。…」


 俺達は町に向けて歩き続ける。やがて日も登るだろう。そろそろ先頭は町に着く頃だろうか?

 フェイト卿達も急な作業をこなしてくれているはずだ。

 さて、町に着いたらそれが初めの一歩だ。そう、俺が王になる為の…。

 

 辺りがうっすらと明るくなって来ているようだ。深い闇が少しずつ白じんできている。

 ギドラが肩から飛び立つ。その金色の身体に日の光が反射し、一瞬輝いたように見えた。


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