特殊能力と使い魔
……頭の中でけたたましくファンファーレが鳴った…ような気がした。
俺はジェネラルとリンコン、そしてジェイと共に地下の坑道をゆっくり移動しているところだ。
しかし、さっきの音はなんだ…?
よくみると、目の前に能力表示の画面が現れている。これは俺にしか見えないのか?
俺はジェネラルに聞いてみる。
「ジェネラル、俺の目の前に何か表示されてるものが見えるか?」
「…何を言っているのかわからん、トオル、大丈夫か?」
「あ、ああ…それならいいんだ、すまない…」
やはり、この表示は俺にしか見えないようだ。しかしなんだ?
……コングラッチレーション?って、何々、奴隷解放ボーナス⁇
ポイント10万と、特殊能力を付加?それに「しもべ」を与える…???
特殊能力…魔法ではない特殊能力を選択せよ
1.「硬化」…身体が一時的に硬化し、ダメージをほとんど受けなくなる。
2.「無効化」…毒や麻痺などの状態を無効化し、影響を受けなくなる。
3.「同化」…周囲の風景に同化し、見た目ではほぼ気づかれる事が無くなる。
4.「巨大化」…自分の身体が一時的に巨大化し、その身体に応じた力を得る。
…なるほど、この中から選べばいいのか。そして「しもべ」とは?
「しもべ」…あなたの思いついた獣や竜、などの種族をあなたの使い魔として使役できます。
…ほほう、俺に使い魔か、思いついたってのは…あ、あの金色、三本首の竜とかかな…?
突然、何処からともなくキリキリって言う泣き声が聞こえる、ま、まさか………⁉︎
「お、おいいったい何が起こってるんだ?」
「なんだ、でかい蝙蝠か何かなのか?」
ジェネラルとジェイが声を上げる。リンコンは何も言わずに周りを見ている。
上空をバサバサと羽を羽ばたかせて、金色のドラゴンが飛んでくる、まさか、まさか‼︎
俺は皆に声をかける。
「み、皆待ってくれ!あれはどうやら俺の使い魔だ」
「何、使い魔だって?」
「おい、使い魔ってのは魔女が連れてる猫のようなものか?」
金色の三首竜が俺の頭の上をくるくる回って、やがて俺の肩に乗る。ちっさ!
全長は50センチ程だろうか。でもなんだか可愛いな。こいつは、そう、「ギドラ」だ!
俺は3人に声をかける。3人とも不思議そうな表情で俺の方を見ている。
「こいつの名はギドラ、どうやら俺の使い魔らしいんだ。ギドラ、皆に挨拶!」
ギドラは三本の首をそれぞれに向けて、キリキリと鳴いてみせた。なんかかわいいじゃねえか!
ジェネラルとジェイはお互いに顔を見合わせ、顔を横に振ってる。リンコンが突然伝えてきた。
「…なかなか面白い生物だ、と言うより精霊に近いものかも知れないな、ギドラという名はどういう意味なのだ?…」
「いや、意味はない。思いついたのさ」
本当は幼い頃からそっち系の特撮怪獣映画が好きだったのだが…。
そして、特殊能力は何にすべきだろうか、うーむ、今の現状では「無効化」が一番効果がありそうだ。いずれ他の能力も手に入るかもしれないが、今は「無効化」を手に入れよう。
俺は「無効化」を選択した。
…何もわからない、が、きっとその状況になれば大丈夫なのだろう。
俺達は歩き続け、時に身をかがめながら坑道を進んで行く。段々と暗闇にも目が慣れてきた。
段々と坑道も広くなってきている。そろそろ出口なのだろうか?
やがて明かりが見えて来る。
「どうやらそろそろ出口のようだ、王都の連中はまだ気づいてないだろう、このまま廃村まで歩いて休憩だ」
俺は3人に向かって声をかける。ギドラは俺の肩にずっと乗っている。
俺と3人は明かりに向かって歩き続ける。眩しい光が俺達を照らす。谷の底の方だが、外の光は明るく感じた。
他の全員は問題無く辿りつけただろうか?俺は少し心配だったが、今のところ異常は無いようだ。川の流れる音が聞こえて来る。
目の前は川が流れていた。川を遡り、廃村を目指す。少し先にビスコンティ卿とシャドーキング卿が立っているのがわかった。
俺達は近づいて声をかける。
「お2人とも問題無かったでしょうか?」
2人とも答えずに、俺の肩を見つめる。シャドーキング卿が口を開いた。
「…おい、トオルその肩のものは何だ?」
「…なかなか面白いものを連れておりますな、トオル様」
「あ、ああ、どうやら俺の使い魔って事らしいんです…」
「使い魔?…まったくお前は本当に良く分からないな…」
俺は苦笑してしまった。するとギドラが肩から飛び立ち、シャドーキング卿の周りをクルクルとんで肩に乗る。キリキリ鳴いている。
シャドーキング卿は少しびっくりしていたが、ギドラの頭を撫でたりしている。
とにかくここまで特に問題は無かった。これから廃村まで歩き、その先のゴーストタウンまではまだまだ長い道のりだ。
やがて王都の軍にも知られる事になるだろう。しかし、今は収容所から脱出した全員を、何とか無事にゴーストタウンに連れて行く。
その後の事は何とかなる。俺はそう漠然と考えていた。
シャドーキング卿がギドラの顎を撫でている。俺はその姿をぼんやりと見つめていた。




