表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/22

脱出準備




 俺達は再び収容施設に戻って来た。俺達の作戦はこうだ…。


 1. 奴隷を収容施設から解放した後、留まることのできる場所を確保する。その場所は崩壊し、ゴーストタウン化している場所が望ましい。


 2. 解放した者達が留まった後、出て行きたい者は直ぐに出て行っても構わない、しかし留まると決めた者はその場所の体制を整える事に協力する。


 3. 収容施設から逃亡する際、出来る限り力による方法は使わず、かつ、短時間での脱出を基本とする。その際弱っている者は、皆で力を合わせて協力する。それができない者は脱出させない。



 大筋ではこんな感じだった。勿論まだまだ甘い部分はある。そして期日は3日後とした。

 これからが忙しくなる。まずはこの施設にいる全員にその伝達する事が必要だ。しかし、中には計画をばらす者もいるかも知れない。その為、この施設で働いている者にも何か手を打つ必要がある。少しの間眠ってもらうのが望ましいだろう。

 痺れ薬や、ひととき麻痺させるような手段だ。これは三賢人に知恵を借りる方がいいだろう。


 そして最短で脱出出来るルート…実はこれはもう考えてある、マットの言っていた坑道を利用する。

 崖の下にまで坑道は作られているとの事だった。その為、崖の上側に入り口を作り、そこから坑道を抜け崖の下に降りる。そこから川を伝い、準備した場所に移動する。数日歩く事になるかもしれないが、俺達がどこに消えたのかは看守達には分からないだろう。


 問題は崖の下の見張りとも言えるヒュドラだが、これはもうリンコンに頼み、操ってもらった。人を見ても何もせずに移動の邪魔をしないようになっている。


 坑道の中の迷路の様なトンネルがどうなるのか不安だが、入り口も坑道の中もリンコンとシャドーキング卿の能力で整備してもらう手筈だった。


 そして俺はその全てをジェネラルやマットに話した。2人とも喜んで協力してくれるとの事だった。


 

 ……その日の作業が終わり、俺はリンコン、マット、ジェネラルを連れビスコンティ卿といつも会う場所に向かう。看守達に怪しまれないようにそれぞれ別のルートから移動する。俺がその場に着くと、既にビスコンティ卿とシャドーキング卿、そしてビスコンティ卿の耳、ジェイの姿があった。他の3人はまだ来ていないようだ。

 するとリンコンが突然空間から現れた。瞬間移動の能力だった…。少し驚いたが声を出さなかった俺を褒めてやろう、ふぅっ、まったく…。

 そうこうしているうちにマットとジェネラルがやって来た。

 ジェネラルはその場に膝をつきながら静かな声で挨拶をする。


 「ビスコンティ閣下、シャドーキング閣下、このジェームズ再びお会い出来る事を光栄に感じます。卑しい身分に奴し、眼前を汚す事をお許しください」


 ビスコンティ卿が優しく答える。


 「ジェネラル閣下、今は私も同じ立場です。堅苦しいのはやめましょう。それよりも協力に感謝致します」


 続けてシャドーキング卿が声を掛ける。


 「ジェネラル、僕も同じさ。とにかく今は同士として接して下さい、よろしく」


 ジェネラルはスッと立ち上がり答える。


 「わかりました、それではよろしくお願い致します。それで今日の話とは?」


 俺はマットとジェネラルにこれまでの事を話す。さすがにマットは2人の賢人とジェネラルに対し、少し卑屈になっていたが、大丈夫そうだ。

 そして俺は坑道の事もリンコン、シャドーキング卿、マットに伝える。マットは答える。


 「坑道はそう簡単には崩れないようにできている。少し通り辛い場所もあるが、俺達鉱夫の仲間達に先導させれば問題ないだろう。しかし、上から入るとなると数メートル…もしくは数十メートルも掘らなければならないかもしれない…大丈夫なのか?」


 シャドーキング卿が答える。


 「う〜ん、僕とリンコン王で力を合わせれば1時間とかからない筈、大丈夫ですね、リンコン王?」

 「…ああ問題ないだろう。いつ実行するのか?…」


 俺はリンコンの念を聞いたマットが叫ぶのを見越して、叫ぶ前にマットの口を手でふさぎ、自分の唇に人差し指を当てる。マットはフゴフゴ言いながら、目でわかったと合図した。


 「うん、じゃあこれからやってしまおう。いいね?」 

 「…了解した…」


 俺はマットに声を上げないよう伝える。その瞬間リンコンとシャドーキング卿は姿を消す…。

 マットは必死に口を押さえて声を殺していたが、相当驚いた様子だった。ジェネラルもさすがに驚いた様子だが、肝が座っているだけあって声には出さなかった。


 しかし、ジェネラルの目は少し暗かった。俺は家族の事を心配しているのだろうと感じた。

 俺はジェネラルの肩を叩き、


 「大丈夫さ、ジェネラル。俺を信じてくれ」

 「フッ…お前に見透かされるようでは、俺もまだまだだな」

 「ははっ、でもここまで辿り着いたぜ。全ては明日だ…」

 「そうだな」


 俺はビスコンティ卿に看守達を一時的に眠らせるような事が出来るか聞いてみた。


 「ふむ、ジェイ何か良い案はあるか?」

 「それならば…」


 ジェイは懐から何やら薬のようなものを取り出す。


 「これは数時間の間人を眠らせ、記憶もハッキリとしない…そんな風にしてしまう薬です。これを奴らの食事などに混入させれば問題ないでしょう」

 「わかった、それを使わせてもらおう。ありがとうございます、ビスコンティ卿、ジェイさん」


 そんな話をしているうちに、リンコンとシャドーキング卿が再び現れる。

 シャドーキング卿が口を開く。


 「まったく面倒だったな…結構深かったけど、ちゃんと坑道まで繋いで来た。中はかなり広い作りになっている。人が移動するのに問題はないだろう」

 「わかりました、ありがとうございます。シャドーキング卿、リンコン」


 リンコンは特に表情を変える事も無い。シャドーキング卿は軽く肯く。


 準備はほぼ整ったと言っていいだろう。後はフェイト卿から脱出した者が入れる規模の町の情報を聞く。

 俺達はその場で別れ、リンコンと俺は昨日フェイト卿達と話した崖の上空に移動した。フェイト卿は既にその場に待っていた。俺は声を掛ける。


 「フェイト卿、ゴーストタウンのような場所はありましたか?」

 

 フェイト卿は答える。


 「ええ、ここから川を遡り、森を抜けたところに小さな廃村のような場所があります。後はもう少し先に人の住んでいない町もあるようです。そちらは少し大きく、私の意見だと、遠い町の方が条件に合っていると思います」

 「わかりました。俺もそちらの方がいいと思います。距離的にはどのくらいでしょう?」

 「そうですね、町の方はここから40キロはあるでしょう。そのくらいが限界かも知れませんね…」

 「はい、しかしそのくらいが丁度いいでしょう。それが俺達の一つ目の王国ですね」

 「フフ…では私はその町を少し整えておきましょう。余りやりたい事ではありませんが…」

 「よろしくお願いします!」


 フェイト卿はその場から去って行く。俺とリンコンは収容施設の中に戻った。


 俺はレイとキコにも全てを伝えた。2人とも2つ返事で協力を約束してくれた。


 全ては明日決まる。俺は覚悟を決めた。その先に未来があると信じて。そして俺は王になるのだ。





 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ