学園生活8
「ご無事ですか。志朗様。」
ユリアが志朗の背中を支えて起こす。
「ああ。久々に意識が飛びかけたよ。それにしても、まさか皇族だとバレていたとはね」
最後にカイが溢した志朗のフルネーム。確かにアズカルドと言っていた。
「ワルキューレ入りが噂されるような男です。知っていてもおかしくはありませんが、皇族と知りながらの狼藉とは…今すぐ斬り殺したい」
皇族とはいえ王位継承権を持たない混血の皇子。後ろ盾などない志朗に危害を加えたところで、痛くも痒くもないとでも思っているのだろう。
「まあまあ。僕は自殺願望があるわけじゃないし、ある程度の実害は覚悟の上だよ。とにかくカイ・レクスは白だということも分かったし。クラスメイトのあからさまなな態度からも、混血排除主義の線は無いかもね」
今日もユリアに自分が余程の危害が加えられるまでは手を出すのを控えさせ、敵の正体を見極めようとしたが、混血排除主義勢力という候補は消えた。
「カイ・レクスは僕を殺そうとすればすぐに殺せただろうしね。」
「単に来月の考査の打ち合わせがこちらの棟であったようです。たまたま現場を見かけてちょlかいをかけてきたまでのようですね」
「ちょっかいにしては過激だけどね。もう二度と関わりたくない」
違和感の残る首を触りながら苦々しくぼやく。
跡になっているかもしれない。
「志朗様。やはりこのやり方は私は承諾できかねます。自ら囮のような真似をして、本当に何かあったらどうするのですか」
「そうなったらカイ・レクスに鼻で笑われるだろうね」
「想像するだけでも屈辱的にも程があります。まあ何かある前に"あいつ"がしゃしゃり出てくるに決まってますが…そうなったら、学校1つじゃ済みませんよ」
「ああ…そうなる前に敵を引きずり出さないとね。来月の実技考査が狙い目かな」
「お願いですから、無駄に矢面に立つようなことは控えてくださいね」
ユリアが深いため息をついた。