学園生活7
「あ、あのありがとうございまっっっ!!」
志朗が身体を起こしてカイへお礼を言おうとした瞬間に、気づいた時にはさきほどクラスメイトに蹴飛ばされた時以上の身体への衝撃と、力の込められた掌が自分の首にかかり息が詰まる。
「勘違いするな。志朗・K・アストリア」
凄まじいプレッシャーだ。
さすが生徒のトップに立つほどの実力。並みの軍人のレベルははるかに超えている。
「貴様を助けたわけじゃない。俺は嫌いなものは視界にも入れない。その眼、その髪。その双黒が忌々しい。」
カイの瞳の奥には深い闇を感じさせる、静かな焔が見えるようだった。単純な混血に対する憎悪、それだけではないような。
「それはこちらのセリフだ、カイ・レクス」
志朗が意識が堕ちかけそうな時、聞き馴染みのある声とカイに向けた鋭い殺気が突如として露見した。
「ふ。さすがはワルキューレだな。この俺に悟られずに背中をとるとは。しかし、学科外での抜刀が何を意味するか分かっているだろうな。ユリア・オルガナイザー」
「御託は良い。今すぐその手を離せ」
「っげほ!」
カイはつまらなそうに志朗の首をあっさりとはなした。志朗の身体は再び床に倒れ伏し、飛びそうだった意識が振りもどされた反動に悶えた。今日は厄日か。
「この混血の護衛をしているというのは本当なようだな。」
「貴様の徹底した混血排除主義も噂に違わないようだ」
ユリアはカイに向けていた殺気はそのままに刀身を鞘へおさめた。
「人の趣味にごたごた言う気はない。貴様が混血が憎かろうが、そうでなかろうがどうでも良い。ただ志朗様への危害は許さない。」
「ふん。見事な忠犬っぷりだな。こいつにどんな国秘があるのか知らんが、度が過ぎたパフォーマンスは逆効果だぞ。せいぜい本当に殺されないように頑張るんだな」
カイは志朗に一瞥をくれると教室から出て行った。
爆弾発言を投下して
「本当に死ぬ前にさっさと身を引くんだな。志朗・K・アズカルド。」