学園生活5
授業が終わり、放課後はそれぞれ部活動や委員会、補修、自習などに励む。
志朗はだいたい図書館で書物や文献を読むことが多い。ユイは風紀委員、ルミアスはルーン文字研究会に所属していた。
「んじゃあ、志朗。俺たちは行くけど、オルガナイザーさんはさすがに今日は迎えに来るよな?」
軍科のユリアとは当然、受ける授業が違うので、別行動になる。
文科はアルブス棟、軍科はアーテル棟と呼ばれる学舎で学んでいるため、日中は基本的に生徒同士が接触することはない。両校舎にそれぞれの生徒が立ち入り禁止というわけではないのだが、溝の深い両生徒はお互いの領域に足を踏みいれようとはしない。ちなみに校舎に付随して寮も分かれているので、普通に生活していれば両生徒が絡むことは滅多にない。
「うん。もうじき来ると思うからお構いなく。ありがとうな」
「殺されそうになったんだから、危機感持ちなさいよね!」
あけすけな物言いだが、ルミアスの表情は真剣だ。
「ああ。気をつけるよ。」
手を挙げて応えると、2人は教室を出ていった。
「志朗・K・アストリア。お前、いつまで混血の分際でアルジェとエルと一緒に居るつもりだ?」
ユイとルミアスの2人が視界から消えた瞬間に、クラスメイト10名ほどに机ごと取り囲まれた。見上げればアズガルド人の生徒が大半で、選民意識の高そうな面々が映った。
「いや、僕は2人とはただの友達で…」
言葉を遮られるように、バーンと目の前の机が蹴飛ばされて数メートル飛んでいった。
「雑種犬が、俺らシングル(純潔)と友達だと認識してること自体おこがましいんだよ」
アズガルド人のリーダー格が志朗の前髪を掴みあげる。
「気に入らねな。その目。」
表情を少しも変えずに感情が見えない志朗に苛立ちをあらわす。
新年度初日からこれか。いや初日だからか。
「混血種がこの学校を卒業したところで、せいぜい地方の役所勤めが目に見えてる。そんなお前らが俺たちエリートと同じ空間で息吸ってること自体不快で仕方ないんだよ。」
今まで文科の生徒たちから受けるいじめは、ここまで直接的なものはあまり無い。ここに来て、我慢の限界がきたか、今朝の出来事に煽動されたか。