学園生活13
オリエンテーションから丁度1週間後、選出枠7名に戦闘特化型トランスデバイスが届けられた。事前にどのモデルが良いかヒアリングがあったらしく、ユイはいつも使用してるトランスに一番近いサーベル型を選んだようだ。ユリアも同じサーベル型と言っていた。
「どうかしら?実際に使用した感じは?」
「ああ。いつも使っているデバイスよりも法力の放出が楽だ。さすが戦闘特化型だな。どうだ?志朗の目から見て、ルーン処理がいつもよりうまくいってるか?」
3人はトランスの確認のために訓練場に来ていた。訓練場には10以上のブースがあり、ブース内には戦闘シミュレーションができる装置がある。ユイはトランスを手にブースに入ると、サングラス型の戦闘シミュレーション用のバーチャルリアリテイ端末を装着し、サーベル型のトランスを構えた。ブース外に居る端末を装着していない志朗とルミアスには、ブース内四方にあるスクリーンから放出される光の残像と、それを次々と叩き落とすユイの振るうサーベルとルーンの素体粒子しか見えない。
前方スクリーンに出された計測数値を見ると、一番直近の成績よりも150%の数値を弾き出していた。
「そうだね。いつものユイのトランスより、数パーセント解析処理スピードが上がっている。あとは、それ以上にマナの放出量がかなり抑えられているね。こっちの方がこのトランスの利用価値を格段に上げているんじゃないかな」
「さすが、志朗!その通りなの!このトランスは従来のものよりルーン圧縮率を280%は上げているの!この前志朗が教えてくれたイディオム化の賜物よ。このルーン圧縮に順じてルーン放出に当てるマナの消費量も半分以下で済む。そこまで今のでわかるなんてあなた本当に規格外ね。なんでそれで実技の成績がD判定なのかしら」
「僕は解析は得意だけど、マナの保有領域が人の1割程度しかキャパがないんだ。だから放出も限られる」
「志朗は戦闘センスは高いと思うけどな。昨年の考査のときは実技考査学年トップ10には入ってたよな」
「いや。あれは本当にまぐれ。たまたま試験内容が僕に有利だっただけだよ。今年は最初のトーナメントで何回勝てるかな」
「そうね。私もデュアルは自信ないわ。筆記試験の方でトップは目指すけどね。志朗にも負けないようにしないと」
「俺は総代と、ユアン先輩と、ユリア様とだけは当たらないように祈るよ」
「決勝戦は多分ユリア様とカイ・レクス総代で決まりよね!もちろんユリア様が勝つのだろうけど」
「いや、お前、俺たちの総代忘れてないか。リース・エルム文科総代だって、カイ・レクス総代に負けてないと思うぜ」
「そんなことより、私は志朗様の身の安全の方が重要です。」
「ユリア様!!」
「ユリア。君もトランスのシミュレーションに?」
他愛ない会話を3人で繰り広げていると、ユリアが3、4個先のブースから、ユイと同じグラス型端末をつけて出て来た。
「はい。ですが志朗様、私は新型デバイスや考査などどうでも良いのです。志朗様が最優先事項です。考査中の護衛が手薄になるだけはないのです。公然と志朗様に刃を向けることができる場で、どのようにして志朗様をお守りするのか、それが今最大の懸念事項です」
「大丈夫だよ。僕だって自分の身くらい自分で守れるさ。それは君は一番よく知っているでしょ」
「ですが。志朗様の身に何かあったら、私は生きていけないのです」
「それなら君を生かすためにも僕は自分の身を守るさ。ユリアのことは信頼している。考査は二の次でも良い。自分の使命を全うして欲しい」
「ありがたきお言葉とお心遣い。命をかけて志朗様をお守りします」
そう言っていつものように志朗の右手をとって口付ける二人の様子を「キャーーー!」と言いながら顔を真っ赤にして興奮するルミアスと、「はぁ」と呆れた様子でため息をつくユイが遠巻きにしていた。




