学園生活12
「それでは、来月に実施いたします、ユグドラシル考査試験のオリエンテーションを執り行います」
通常、オリエンテーションは各クラスの教室で行うものだが、今日は3週間後に迫る考査試験のオリエンテーションのため、ユグドラシルの全校生徒およそ2500人を収容可能の大講堂で執り行われた。もちろん軍科、文科生徒全員が集まっている。講堂内の座席の中央で座席が綺麗に分かれてはいるが。
「まずはお手元の資料の2ページ目をご覧ください」
志朗はユイとルミアスに挟まれる形で着席していた。軍科のユリアは文科生徒とは反対側に着席している。中央の壇上には、オリエンテーションの進行役の職員女性がマイクを持っている。
「今年の考査試験も例年通り、年に一回のユグドラシルにおける考査試験となります。つきましてはこの考査試験の成績次第で、今年度の授業選択、来年度以降のクラス選考、卒業後の進路など、今後の身の振りが変わってきます。みなさん日頃の成果を存分に発揮してくださいね。それでは次のページをご覧ください」
ページをめくると試験内容が図式で表記されいる。
「今年は5年に1回の考査内容変更の年にあたります。今年は実技試験の方法を大きく変更しております。その名もデュアル形式試験です。ご存知の通り、ユグドラシルでは生徒同士での戦闘行為はご法度です。しかしながら、デュアル(決闘)制度の導入により、風紀委員もしくは、教員の立会いによってのみ生徒同士の決闘が認められていますね。今年の試験はこのデュアル制度を取り入れ、実技レベルを図ります。」
この試験方法に対して、講堂内がどよめく。決闘という形式に対して、好戦的な生徒や実技に自信のある生徒は色めきだった雰囲気だが、文科生徒の大半は後ろ向きな反応だ。
軍科の一人の男子生徒が手を挙げた。
「発言をどうぞ」
「この制度を適用する場合、どのようにして対戦相手を決めるのでしょうか。また、どのようにデュアルを通して成績を決めることになるのでしょうか。具体的な事例をあげてご回答願います」
「ご質問ありがとうございます。資料の次のページをご覧ください。まず対戦相手ですが、原則、軍科の生徒は軍科の生徒同士。文科の生徒は文科の生徒同士で決闘をして頂く形となります。まずはクラス単位のトーナメント制をとります。クラスで1位となった生徒は学年内の総当たり戦を行い、学年トップ5を争って頂くことになります」
「この方法だと、学年トップはユイに決まりよね。最初から結果がわかってるなんてつまらないわ」
志朗の右隣のルミアスがぼやいた。
「学年でトップとなった生徒は、トップ同士のトーナメントを行い、各科それぞれの1位を決めて頂く形となります。ちなみにこのトーナメントのトップ3になった生徒には、この前内部リリースされた戦闘特化型トランスデバイスの所有を認められます。さらに各科トップ3の計6名はず、2週間後にその戦闘特化型トランスデバイスを使用して、総当たり戦を行います。2週間でトランスのカスタマイズや実用訓練をして頂きます」
この発表に生徒たちはさらに浮き足立った様子だ。生徒の所有を認めるということは、この前から改良が進んだのかもしれない。何にせよこのインセンティブは生徒たちには効果抜群だろう。
「そして、このデュアル形式ですが、特例として学校側から指名された生徒7名は、通常の形式から外れ、選出枠内でのデュアル試験を執り行います。次のページに選出生徒リストがありますので、ご確認をお願いいたします」
「げ、俺は選出枠かよ」
ユイは、選出生徒のようだ。まあ、誰も異論ないだろう。もともと軍科でも学年トップだったのだから当然だ。
「ユリア様も選出枠ね!ユイが選出されているんだから当たり前だけど。良いなぁ〜ユイはユリア様とデュアルできるチャンスがあるってことよね」
「この選出枠7名は、所属、学年は関係ありません。ユグドラシア内の既存成績上位7人となります。そしてこの7名は、無条件で戦闘特化型トランスデバイスの所有を認められ、決勝戦ではそのトランスデバイスを使用した試合をして頂きます。これはメディア向けのリリースイベントにもなりますので、選出枠7名の方には、トランスデバイスを来週にお渡しいたします。考査開始までに、調整をお願いいたします。もちろんこの7名は決勝戦以外での使用も認められています」
「マジかよ。来週にはあのトランスが使えるってこと!?この前見たときは、とてもじゃないけど俺には使いこなせるとは思わなかったけど」
「大丈夫。あれからまだ2週間しか経ってないけど、志朗のアドバイスのおかげでかなりアップグレードできてるわ。解析処理負担も効率も格段に良くなった。トライアルでも十分に実用化できるレベル数値を出しているし」
二人の掛け合いに挟まれながら、資料の選出リストを見ると、この前出くわした軍科生徒総代カイ・レクス、そしてルーン研究会会長のユアン・マックェルの名前もあった。ただのルーンオタクというわけではないようだ。




